“花道”のために交代枠をつくりたかったドルトムント
花道を飾ることはできなかった。ボルシア・ドルトムントが1.FSVマインツ05をホームに迎えたブンデスリーガ第33節。
「本当に彼にもう1試合プレーして欲しかった。もしチャンピオンズリーグ(CL)の出場権を確実なものとし、はっきりとしたなら、彼は本当に出場する予定だったんだ」
GKロマン・ビュルキの言う「彼」とは、もう1人のロマンこと、GKロマン・バイデンフェラーである。37歳のベテランGKは、今季限りで現役を引退する。つまり4月5日のマインツ戦は、バイデンフェラーにとって、本当の意味でホーム最終戦だった。この試合を終えれば、もう2度と永遠に公式戦でジグナル・イドゥナ・パルクのピッチに立つチャンスは訪れない。
試合開始前、マルセル・シュメルツァーは次のように言ったという。
「ロマンは16年の全てをこのクラブに捧げた。僕たちは一層の奮起を促さなくてはならない。ロマンの個人的な別れを可能にするためにね」
“盟友”バイデンフェラーに花道を用意するために、チーム一丸となって勝利を目指す。そうして一体感を高めることは決してネガティブなものではないだろう。だが見方を変えれば、ドルトムントの選手たちは試合に私情を持ち込み過ぎた、とも言えるのかもしれない。
前節ブレーメン戦までにCLの出場権を確保できていたら、マインツ戦でのバイデンフェラーの途中起用はおろか、先発で起用することも可能だっただろう。だが現実的には、マインツ戦を前に、決してドルトムントはCLの出場権を確保していたわけではなかった。そして相手が14位と残留争いの渦中にあるからといって、むしろ生き残りを賭けた最中にあるからこそ、マインツ戦で来季のCL出場権を確保することは決して簡単ではなかったのだ。