悔いの残る詰めの甘さ。守備ではリバプールを封殺したが…
守備でも然りだ。前述のようにサイドのスペースは閉めながら、多彩な動きで撹乱を図るリバプールの攻撃戦術にも対応。センターFWのロベルト・フィルミーノが中盤に落ちて前線のスペースを空けようとしても、センターバックはむやみについていかない。そこにサラーが走りこもうとしても、コンスタンティノス・マノラスがカバーする。
そしてボールを奪うと、ディ・フランチェスコ監督は「押し上げろ!」と最終ラインにすぐさま指示を出す。こうしてローマは中盤でコンパクトな組織を作り、効率よくボールを奪取していった。この結果、先に間延びしたのはリバプールの中盤の方だった。
しかし素晴らしい試合の入り方をした彼らは、手痛いミスを犯した。9分、中盤でラジャ・ナインゴランが痛恨のパスミスでボールを失う。リバプールのようにカウンターの速い相手にはそれが致命的となり、あっという間にローマの右サイドへ展開される。ローマの守備陣が戻りきれないところに出現したのはサディオ・マネ。ゴール前に走りこまれ、シュートを決められた。
その後リバプールのオウンゴールで同点となるが、ローマにとっては25分の失点もなんとも悔やまれるものだった。コーナーキックの守備でエディン・ジェコがヘディングクリアにいくが、そこにフィルジル・ファン・ダイクが体を寄せ、クリアボールはゴール中央に飛ぶ。ローマの選手はジェコへのファウルだと自己判断し足を止めた。しかしプレーは流され、あとはジョルジニオ・ワイナルドゥムがやすやすとヘッドを決めた。
ローマは失点シーンももちろんのこと、セットプレーにも詰めの甘さを残した。ゴールを奪おうと思ったら大事にしなければならないところだが、前半に4度得たコーナーキックは生かせない。押し込まれながらもリバプールの中央の守備そのものは堅く、前半はローマに枠内シュートを許さなかった。追い上げなければならない前半で、細かいプレイを詰めきれずに1-2。残念なところだった。
ただその後、ローマの選手は気持ちを折ることなく、ゲームプラン通りのプレーを実行する。そして後半でリバプールを圧倒したのは確かに素晴らしかった。
カウンターの守備を集中させ、中盤では常に相手より先にボールを拾う。前線は闊達(かったつ)に動き、特にジェコはバスケットボールにおける最近のセンターよろしく、ゴール前のエリアからあえて離れて撹乱を図る。そしてエル・シャーラウィは、トレント・アレクサンダー=アーノルドを空転させる。52分、この両者の動きが噛み合い、ローマは再び同点に追いつく。左サイドを突破したエル・シャーラウィのシュートのこぼれ球を押し込んだのは、ゴール前でフリーになっていたジェコだった。