自らのスタイルではなく、相手を潰すために
「自分たちらしいサッカー」
2014年、日本サッカー界を駆け巡ったフレーズだが、それはネガティブな意味となった。しかし、4年後の2018年4月、再びこの言葉が日本サッカー界のトップから発せられていた。
自らが理想とするサッカーを実践すれば、勝利へ近づくことはできるのだろうか。それは、おそらく正解だろう。
ただし、それは対戦相手、対戦場所、両者の状況など多くの要素を加味した上で、的確なプランを理想とした場合である。対戦相手を見ずに、ロマンだけを見て理想を立てるのはむしろ勝利は遠のく。
ジネディーヌ・ジダン監督に率いられたレアル・マドリーが欧州の舞台で圧倒的な強さを持つ理由が、まさにこの前者である。彼らは、強敵バイエルン・ミュンヘンを下して決勝進出。チャンピオンズリーグ3連覇へ王手をかけた。
ジダン監督は、アウェイで行われる1stレグに向けては、前線から強いプレッシングを仕掛けるプランを立て、選手はそれを完璧に遂行した。その結果、敵地で2-1という結果を手にした。
続く2ndレグでは、このリードを守るためにホームながら攻撃よりも守備に比重を置いたプランを立てていた。その結果、試合こそ2-2の引き分けだったが、2試合合計では4-3というスコアでドイツ王者を破った。
この2試合で、マドリーのボール支配率はともに40%。今季のマドリーは、全公式戦を通して57.2%という支配率を記録していることから、本来はある程度ボールを持つスタイルを基本としていることがわかる。
それでも、難敵バイエルンを破るために“重量級”の選手たちが守備に重きを置く戦略を選択した。仮に、ホームとアウェイの順番が逆であれば、全く異なる試合になった可能性が高い。