ヴァイッド・ハリルホジッチ氏が都内で記者会見を行った【写真:編集部】
4月27日、都内で日本代表監督を解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ氏が記者会見を行った。
その中で、ハリルホジッチ氏は日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長から直接解任を告げられた際の様子を克明に語っている。
今月9日に田嶋会長が日本代表監督交代に関する記者会見の場で、直前の同月7日にフランス・パリのホテルでハリルホジッチ氏と面会したことを明かしていた。その上で「『紙1枚でもいいんだ』と言われましたが、私は彼の功績も考え、直接伝えました。びっくりしていました。動揺や怒りもあったし、『どうしてなんだ』という理由も聞かれたのも事実です」とも話していた。
ただ、明確な解任理由を挙げることなく「コミュニケーション不足」ということを伝えたのみだったという。
一方、ハリルホジッチ氏は、4月7日の田嶋会長との面会の様子をより詳細に語った。のちに解任を宣告される氏は「田嶋会長からパリへと呼び出しがかかって、私は何のことかわからずホテルへ出向きました」と明かした。
始まりは「こんにちは」というお互いの挨拶から。この瞬間まで、ハリルホジッチ氏は自らが日本代表監督の職を解かれることを全く想像していなかった。
「その後、腰掛けて、(田嶋会長から)『ハリルさん、これでお別れすることになりました』という話があったんです。最初は『え?ジョークだろ?』と私は思いました」
ハリルホジッチ氏は狼狽した。なぜ3年間にわたって日本サッカー界に尽くしてきた自分が、ロシアワールドカップ開幕まで約2ヶ月というタイミングで解任されなければならないのか。その理由が全くわからなかった。
「1分経って、田嶋会長に『なぜかおっしゃっていただけますか?』と言いました。つまりは『コミュニケーション不足』だと。そこでもっと怒りが沸き立ってきたんです」
やはり田嶋会長本人が話したように、職を失うボスニア人指揮官に対し解任の明確な理由が示されることはなかった。記者会見の終盤でハリルホジッチ氏は無念そうに「コミュニケーションとはあまりにも広い意味すぎる。具体的に誰となのか、どういうことなのか教えていただきたい」とも述べていた。
「その場で『(コミュニケーションがうまくいっていなかったのは)どの選手と?』と(聞きました)。そうしたら『全般的に』というお答えでした。その部屋からは5分経って出ました。私はもう動転して、いったい何が起こったのか分かりませんでした」
ハリルホジッチ氏と田嶋会長の面会は約5分間で終了したという。自らの解任を宣告された側は、その根拠がわからないまま帰路につくことになった。
JFA内にも、代表合宿中のホテル内にも、自らのオフィスを設けて常に選手やスタッフたちと「コミュニケーション」を図り、3年間続けてきた直接のやりとりに問題を感じていなかったというハリルホジッチ氏。それだけに「コミュニケーションの問題」で解任を告げられたことには納得がいかなかったようだ。
パリで電撃的に職を失ったハリルホジッチ氏は、同時に仕事を失うことになったコーチのジャッキー・ボヌベー氏や、フィジカルコーチのシリル・モワンヌ氏、GKコーチのエンヴェル・ルグシッチ氏にすぐ連絡を入れたという。
「私と一緒にやってくれているコーチ達に電話をしました。1人はイングランドにいましたし、もう1人はドイツにいて、そこで選手たちの視察をしていたんです。それで言ったんです。『もううちに帰りなよ、終わったから』と。コーチたちの反応がどうだったかはご想像ください」
当然、突如ハリルホジッチ監督解任と自分たちの失職を伝えられたコーチ陣は寝耳に水で、驚いたことだろう。何も知らされないまま、ワールドカップに万全の状態で臨むための準備を進めていた真っ最中だった。3年間にわたって日本代表を率い、日本サッカー発展のために尽力してきた指導者は、たった5分間の「コミュニケーション」で日本を去ることになってしまったのである。
【了】