ディエゴ・オリヴェイラが繋いだ「信頼」の環
長谷川監督は驚いたようだが、ディエゴ・オリヴェイラは柏時代にヘディングでのゴールも多く決めている。分厚い胸板と鍛え上げられた下半身から生み出されるパワーは対峙するDFを畏怖させ、図抜けたスピードでも相手の脅威となる。アシスト役になれる技術も備えており、総合力の高さではJリーグ屈指のストライカーと言えるだろう。
今ではゴールを量産して高く評価されているディエゴ・オリヴェイラだが、来日までは目立った成績を残していなかった。母国ブラジルのトップリーグでもほとんど実績がなく、2011年に在籍した韓国の水原三星ブルーウィングスでも試合出場の機会はわずかで力を発揮しきれなかった。
それが好転したきっかけが日本への移籍で、柏での1年目に記録したシーズン12ゴールはキャリアハイの数字。リーグ戦で5ゴールに終わった昨年も、仮に全試合フルタイム出場していれば11ゴールを奪えるペースだった。
今季に関して言えば、すでに昨年の成績を超えているばかりか、現在のペースで得点を重ねていけばリーグ戦だけで27ゴールに届く勢いである。ディエゴ・オリヴェイラにとって、日本でキャリア最高の時間を過ごせているはずだ。
「シーズン始めは少し結果が出なかったこともあったけど、今はいい結果が出るようになって、チームは非常にいいムードになっている。(FC東京は)1人ひとりのクオリティも高いし、監督が僕たちにいい力をもたらしている。結果も出ているので非常に嬉しい。僕も含めて選手にはそれぞれ強みがあると思うけど、その強みを出すよう監督からいつも言われている。その中で自分の強みを出せたからこそ結果が出ていると思う」
身体的な強みを前面に押し出すだけでなく、組織を意識したプレーもできる万能ストライカーが、FC東京のチーム全体の信頼関係をつなぎ、好循環を生み出している。これまで戦力が充実していながら決め手を欠いていた青赤軍団を、一段階上のレベルへと引き上げられるかもしれない頼もしい新エースが現れた。
(取材・文:舩木渉)
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