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ソン・フンミン、兵役免除のラストチャンス。アジア大会で森保ジャパンと対戦も

text by 編集部 photo by Getty Images

ソン・フンミン
サッカー人生をかけたソン・フンミンがアジア競技大会で森保ジャパンに立ちはだかる!?【写真:Getty Images】

 韓国代表の絶対的エースに君臨しプレミアリーグでも大活躍中のトッテナムFWソン・フンミンは、25歳にしてキャリアの岐路に立たされている。韓国籍男性に義務づけられている兵役に就くためのタイムリミットが迫っているのだ。

 韓国籍の19歳から32歳の男性は、約2年間の兵役に就かねばならない。年齢だけ見れば25歳のソン・フンミンにとって大きな問題でないように思えるが、サッカー選手となれば事情は全く異なる。韓国軍には国内のプロリーグ(Kリーグ)に参戦しているクラブがあり、そこでプレーするためには27歳までに入隊しなければならないのである。

 しかも、軍隊クラブでプレーするためには、入隊の前年、つまり26歳の年は必ずKリーグでプレーしていなければならない。もちろん一般の部隊に入隊する道もあるが、そうなるとサッカー選手としての未来は絶たれてしまう。となれば、いかに兵役免除を勝ち取るかがカギになる。

 兵役免除の条件はいくつかある。まずは2011年に受けた膝の軟骨除去手術の影響で兵役を免除されたGKキム・ジンヒョン(現セレッソ大阪)のように入隊前の身体検査で不適格と診断されるような大きな怪我を負う、もしくは負っていたか。

 もう1つは、27歳で10年間のモナコ居住権を手にしたFWパク・チュヨンのように、海外に住みながら永住権を獲得したり、帰化して国籍を変更したりすることで、入隊を最大限に延期する方法もある。労働ビザではなく永住権を持って海外に滞在したまま36歳を超えると入隊の年齢制限に引っかかるため、兵役は自動免除となる。

 だが、これらの手段はソン・フンミンにとって現実的とは言えない。やはり最後に残り、最も現実的な兵役免除の方法は国際大会における好成績なのである。オリンピックではメダル獲得、アジア競技大会で優勝が条件になる。2002年日韓ワールドカップの韓国代表メンバーは4位入賞で兵役免除となったが、アジアカップではどんな成績を残そうと兵役は免除されない。

 軍隊クラブでプレーするために入隊前年をKリーグで過ごさねばならないことを考えると、ソン・フンミンが兵役を回避するためのラストチャンスは、今年8月から9月上旬にかけてインドネシアで開催されるアジア競技大会にオーバーエイジ選手として出場しての金メダル獲得ということになる。

 2014年の仁川アジア競技大会で優勝した韓国代表にはキム・スンギュ(現ヴィッセル神戸)やパク・チュホ(現蔚山現代)、イ・ジュヨン(現ジェフユナイテッド千葉)、キム・ミンヒョク(現サガン鳥栖)、ユン・イルロク(現横浜F・マリノス)、キム・シヌク(現全北現代)らがおり、彼らは皆兵役免除となっている。特にパク・チュホは27歳でラストチャンスにかけて出場していた。

 ソン・フンミンもそのようになるのか。英『スカイ・スポーツ』によれば、U-23韓国代表を率いるキム・ハクブン監督は「ソンにはアジア競技大会で戦いたいという強い気持ちがある」と語っているという。

 だが、「まずはロシアワールドカップがあるので、アジア競技大会で我々と会う前にいいプレーをしろと伝えた」と指揮官の言葉が伝えられている。もしワールドカップで上位に入れば、そこで兵役免除の権利を得られる可能性もある。

 ソン・フンミンにとって、アジア競技大会参加に向けた最大の障壁はスケジュールだろう。同大会はFIFAの国際マッチカレンダーに含まれておらず、代表チームに選手を拘束できる権利がない。実際、レヴァークーゼン時代の2014年、仁川アジア競技大会に出場を望んでいたソン・フンミンはクラブから許しを得られず代表チームへの合流を断念していた。

 今年はトッテナムと大韓サッカー協会(KFA)が交渉することになる。プレミアリーグの新シーズンはアジア競技大会よりも前、8月11日に開幕するため、韓国代表FWの不在は所属クラブの戦いにも影響を与えることになる。それをトッテナムが許容し、今後のソン・フンミンのキャリアを考慮してジャカルタへの派遣を認めるかどうかが今後の焦点となりそうだ。

 U-23韓国代表のキム・ハクブン監督は「微妙な問題だが、KFAはこの問題をうまく処理してくれると信じている。A代表、U-23代表、KFA、選手本人、そしてクラブが緊密に連携していくべきことだ」と、ソン・フンミンの招集実現を願っている様子。

 日本からは東京五輪を目指すU-21代表がアジア競技大会に参戦予定となっている。自分たちの未来をかけて強い覚悟で臨むソン・フンミンと韓国代表が、森保一監督率いる日本代表の前に立ちはだかるかもしれない。

【了】

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