リバプールでストライカーとして覚醒
ゴールをするたびに両手を挙げ、視線を落として押し黙る。ゴールを喜ばないのはかつての仲間たちとファンに対する敬意の印だ。モハメド・サラーにとって、ローマ戦は古巣との対決だった。
フィオレンティーナとローマでプレーした彼は、セリエAでも強烈な印象を残していた。縦へのダッシュが滅法速く、ボールを持ってもスピードが落ちない。DFを置き去りにし、繊細な左足でシュートを決めた。インテル戦では長友佑都(現ガラタサライ)がマッチアップをしていたが、彼との丁々発止はいつも見応えがあった。
そのサラーは、リバプールでストライカーとして覚醒。そして彼を熟知している古巣との対決では、2ゴール2アシストだ。ユルゲン・クロップ監督が敷く“ゲーゲンプレス”による高い位置からのボール奪取と、ローマの3バックの盲点を突いた戦略が、スピード溢れる彼の突破をさらに凶悪なものにしていた。
それは、35分の先取点に示されていた。自陣で守備をしてボールを奪い、カウンターへと切り替えたローマは、中盤に下がってきたエディン・ジェコにボールを集める。ところがその際、ジョーダン・ヘンダーソンとジョルジーニョ・ワイナルドゥムに強烈に体を寄せられる。周囲のパスコースも丁寧に消されて、逃しどころがない。
ジェコは厳しい当たりを受け、ケビン・ストロートマンのフォローもむなしくボールをロスト。そしてそのボールは躊躇なく、左に開いていたサラーに展開された。
攻守が切り替わり、左ウイングバックを務めるアレクサンダル・コラロフは前に行ってしまっている。ここでボールを奪われると、戻ってバックラインを整えるのには間に合わない。サラーはスペースを利用し、左足を巻いてミドルシュートを放った。ボールは軽くループを描き、アリソンが触れないゴール左上隅に吸い込まれた。