ミシャは「スペシャル」。新監督との出会いで生まれた変化
自身の公式ブログで何度も公言してきた、無類の読書好きが高じているからか。ユニフォーム越しでもはっきりとわかるぶ厚い胸板と、身長187cm体重80kgの体躯で相手チームを畏怖させる北海道コンサドーレ札幌のFW都倉賢は、ピッチを離れれば哲学的なエッセンスに富んだ言葉を自然と口にする。
たとえば「ミシャ」の愛称で知られる浦和レッズの元監督で、今季からコンサドーレの指揮を執っているミハイロ・ペトロヴィッチ監督と出会ったことで、自分のなかで何が変わったのか。こう尋ねられた都倉は、聞いた側が少し驚くような言葉を残している。
「スペシャルな監督だと思います。いままでのパラダイムシフト(当然と考えられていたものが劇的に変化すること)じゃないですけど、革新的というか、無知の知というか。どんな状況においても、全く知らなかったことを新たに知ることがまずは成長の第一歩になっていると思いますし、刺激を受けることで自分のなかに深みも出てくる。
言い出せばきりがないですけど、ディフェンスの選手にあれだけ『ボールを前へ運べ』と言う監督はまずいません。サッカー観や考え方における幅が増えたことで、次に何をやらなきゃいけないかを考える。成長へのいいサイクルが、ミシャと出会ったことで自分のなかで生まれているのかなと」
川崎フロンターレU-18からトップチームに昇格した2005シーズンからプロのキャリアをスタートさせた。ザスパ草津(現ザスパクサツ群馬)、4年間所属したヴィッセル神戸を経て、2014シーズンからプレーしているコンサドーレがプロ選手として最も長く在籍したチームになった。
もっとも、ここまでの都倉のサッカー人生を振り返れば、挫折のほうがはるかに多かった。フロンターレでの3年半は計6試合、時間にして約40分しかピッチに立てず、当然ながら無得点に終わった。J2のザスパで自信を取り戻したものの、ヴィッセルで再び挑んだJ1の壁にはね返され続けた。
ヴィッセルがJ2を戦った2013シーズン。わずか2ゴールに終わり、オフに契約の非更新を告げられた都倉はすべてを「無」にして、文字通り裸一貫でヨーロッパへ挑むことを決意する。
「自分のなかでは『もっとできる』という思いがありましたし、同年代の選手たちがどんどん海外へ挑戦していたなかで、自分自身も挑みたいという気持ちになったので」