セレッソはACLを重視していたのか
何食わぬ顔でそう言ってのけられたことは称賛に値するだろう。監督が必要だと感じたその「経験」をセレッソから奪ったのは、監督自身のメンバー選考だったからだ。
グループリーグ最終節で、2度の大陸王者となったチームをアウェイで撃破するというのがもともと困難な任務であることは確かだ。だがチーム最高の11人を大阪に残してくれば、その任務達成は事実上不可能となってしまう。
ワールドカップのためのシーズン中断が迫る中、J1各チームの日程が厳しくなっていることは否定できず、情状酌量の余地がある状況でもあった。
セレッソの試合日程は、3月31日から5月5日までの35日間に11試合が詰め込まれている。この厳しい5週間を通して、1週間に2試合を同じ11人の選手で戦っていくのが不可能であることは明白だ。
今後のリーグ戦の試合に向け、主力選手たちを温存するというギャンブルに出る価値はあったと考えることもできるかもしれない。ブリーラム・ユナイテッドがグループリーグ最終節の済州ユナイテッドとのアウェイゲームに勝てなければ、セレッソはいずれにしても勝ち進むことができていた。
しかし、ユン監督がメンバー全員をローテーションすることを選んだのは今回が初めてではない。3月のアウェイでのブリーラム戦でもレギュラーの11人を休ませて0-2の敗戦を喫したことは、結果的には広州恒大戦の敗戦以上に決定的な意味を持つことになった。タイでの試合に引き分けてさえいれば、セレッソはブリーラムを抑えてグループを突破できていたはずだった。この事実は、ACLがクラブの重視する大会ではなかったことを明確に示している。
【次ページ】“カネ”が象徴するサッカー界の現実