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「完璧なDF」が持つ、“ネジがぶっ飛んだ”別の顔。 英雄セルヒオ・ラモス、一瞬に命がけの闘争心【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

退場王という側面

 8歳でセビージャの少年チームに入り、アントニオ・プエルタらとともに成長していった。後に若くして世を去ったプエルタの背番号15をスペイン代表で着けたラモスは、2010年ワールドカップで優勝したときに「プエルタに捧げる」と述べた。

 19歳でレアル・マドリーへ移籍。2700万ユーロの移籍金は十代の選手としては最高額だった。レアルではフェルナンド・イエロの4番を受け継ぎ、175試合にプレーしたところで早くもイエロの退場回数に並んだ。完璧なはずのDFが持つ唯一の欠点だ。

 ラモスの退場要因はもちろん1つではない。いらないファウルで2枚目のイエローをもらうことも多く、中にはイエローカードに相当したか疑わしいものがあったのも確かだ。ただ一方で、誰が見ても明白な一発レッドそのもののファウルも少なくない。リオネル・メッシをレイトタックルで吹っ飛ばしたときには、すぐ近くにいたチームメートのトニ・クロースでさえ「あーあ」という顔つきをしていた。荒れ狂ったときのセルヒオ・ラモスはチームメートが“ひく”ぐらいの無法者と化す。

 球際の当たり方はかなりクレイジーだ。自分のケガも相手のケガもお構いなしに一切の妥協も容赦もない競り方をする。それがファインプレーになることも多いが、1つタイミングが違えばレッドカードになるという当たり方なのだ。退場王のラモスは悪逆非道というより、ただただネジが1本どこかへ飛んでしまうだけなのかもしれない。しかし、この恐怖心が欠如しているような闘争性は、彼の大きな長所にもなっている。

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