違いを生む若武者の起用は?
一方のローマは、CL準々決勝では難敵バルセロナを敗退に追い込んだ。1stレグでは1-4と大敗を喫しながらも、ホームでの2ndレグは3-0と相手を一切寄せ付けなかった。
ローマがバルセロナを封じ込めた最大の理由は、こちらもハイプレスである。試合開始時の並びは3-4-1-2という形だったが、ゲーム中は3-4-3の配置に変わっていた。ラジャ・ナインゴランは事実上、左ウイングの位置を取り、シックは右ウイングでプレーした。これにより、相手のCB、SB間のパスコースを塞ぎ、敵のビルドアップを阻止することに成功したのだ。そしてボールを奪うと中盤の選手は一気にペースを上げ、ゴール前に絡んでくる。守備から攻撃までの一連の流れが非常に速い。リバプールと同じような長所をローマも持ち合わせているのだ。
ここで少し変化を加えるのであれば、ロレンツォ・ペッレグリー二の起用といったところだろうか。
21歳の若武者はエウゼビオ・ディ・フランチェスコ監督がサッスオーロを指揮していた時代に発掘した逸材である。身長182cm、長い足を生かし中盤で果敢にボールを刈ることもできれば、柔らかいボールコントロールと繊細なパスセンスで攻撃のリズムも生むことができる。先日行われたリーグ戦第34節のSPAL戦でも背番号7は活躍をみせていたため、状態は悪くない。
何よりペッレグリー二は試合のテンポに合わせるのがうまい。ハイプレス対決となることが予想されるこの試合では同選手の持ち味が最大に発揮できる。若い選手なので大舞台での経験不足という懸念点はあるが、フレッシュさ、途中出場させても試合の流れに順応できるという点では、最高の隠し駒であることは間違いない。
プレーエリアも広いため、様々な位置に顔を出すことも可能。ケビン・ストロートマンのようなダイナミックさはないが、守備面での奮闘にも期待でき、攻撃に1つアクセントを加えたい場面があれば、同選手の起用はうってつけだ。中盤の攻防がカギになるであろうこの試合ではペッレグリー二こそ、何かをもたらしてくれる選手なのかもしれない。
およそ16年ぶりの対決となるこの一戦。果たして先に決勝戦進出への王手をかけるのはどちらになるだろうか。
(文:小澤祐作)
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