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ヴェンゲル王朝の終焉。プレミアの新時代を切り開いた先駆者、在位22年の偉大な功績

text by 舩木渉 photo by Getty Images

倹約家が志した健全経営。プレミアで生き残る道

アーセン・ヴェンゲル
ヴェンゲル監督は1997/98シーズンに英国人以外の監督として初めてプレミアリーグを制した【写真:Getty Images】

 プレミアリーグの多国籍化はリーグそのもののレベルアップにもつながり、世界的な人気を獲得するうえでの礎となった。優秀な若手を育成し、トップチームで活躍させる文化をアーセナルに根づかせた意義は大きい。偉大な功績を称えられ、2002年にはフランス政府よりレジオン・ド=ヌール勲章を受勲、さらに2003年、英国サッカーに対する貢献を評価されて大英帝国勲章を受勲した。

 指導者としてのヴェンゲルは、常に攻撃的なサッカーで観る者を魅了してきた。そのうえで群雄割拠のプレミアリーグにおいて、2015/16シーズンまで20年連続トップ4を維持し続けた。そうやってアーセナルを世界的なブランドに成長させていったのである。

 その証拠に、2016/17シーズンに過去最高の4億2280万ポンド(約640億円)という収益をあげた。マンチェスター・シティなどには及ばないが、4億ポンド(約600億円)を上回る収益はクラブ史上初のことだった。

 赤字体質になりがちなクラブの運営において、黒字財政による健全経営の文化を確立したのもヴェンゲルである。移籍交渉において資金を出し渋りがちなことで「倹約家」と揶揄されることもあったが、各クラブが記録的な移籍支出を毎年更新し続ける中、ブレることなく健全経営を貫いてきた。

 もちろん結果が出ないここ2年ほどは批判を浴びることも多くなり、「ヴェンゲル・アウト」の声も大きくなっていた。ゼネラルマネージャーやスポーツディレクターという強化専門の役職を置かず、「全権監督」としてチーム運営のすべてを統括するやり方も「時代遅れ」と言われることがあった。

 やや放任主義的な傾向があり、我の強いスター選手たちを統率しきれずマネジメント能力に疑問を投げかけられることもあった。場当たり的な采配で非難されることもあった。だが、そのような些末な批判によってこれまでの功績が色褪せることはない。

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