名古屋からロンドンへ。無名のフランス人監督がアーセナルへ
1996年10月1日。これは当時46歳のアーセン・ヴェンゲルが、アーセナルの監督に就任した日である。そして2018年4月20日、ヴェンゲル監督の今季限りでの退任が発表された。
直前まで日本の名古屋グランパスを指揮していたイングランドでは無名のフランス人監督が、22年後もアーセナルを率いているとは就任当初に誰が想像しただろうか。結果が出なければ真っ先に責任を問われるのが監督だが、常に勝利が求められる名門クラブにおいて20年以上も同じ立場であり続けることの難しさや偉大さは計り知れない。
1980年代半ばから10年近く続いたジョージ・グラハム政権が選手獲得における不正発覚によって終わり、ブルース・リオッホ体制も1年しか持たず。その後2人の暫定監督を経て迎えられたのがヴェンゲルだった。
それから22年にわたってプレミアリーグで常に先頭集団に立ち続ける名将は、イングランドのフットボールに様々な革新をもたらした。リーグ優勝3回、FAカップ制覇7回という獲得タイトル以外の面でも、ヴェンゲルの影響力は絶大だった。
まず、イングランドにおけるプロ選手のピッチ外での生活を見直したというのは有名なエピソードである。それまでは油ものや糖分の摂りすぎで、何も手をつけられていなかった選手たちの食事を、アスリートらしく栄養バランスの整ったものに変更。いくつもの制限を設けてパフォーマンス向上につなげた。
この改革は日本での経験に基づいているとも言われるが、今でこそ当たり前になっている選手たちの徹底した栄養管理を他に先んじて導入したのはヴェンゲルだったのである。彼がアーセナルを率いた初年度、1996/97シーズンの3位という成績は1990/91シーズンの優勝以降で最高のものだったことが、その効果を証明していると言えるだろう。