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Jリーグ 7年前

広島MF稲垣祥、「城福イズム」の申し子が快進撃の象徴に。磨き上げた「走り」という武器

text by 藤江直人 photo by Getty Images for DAZN

競争の中で見出した自らの生きる道

 5月中旬まで続く、過密スケジュールを考慮した選手起用なのか。こう問われた指揮官は「そこには競争があります」と表情を引き締めながら、首を横に振っている。

「だとしたら、全員がターンオーバーになっているはずなので。彼にはストロングポイントがあり、足りないところもある。足りないところをもっと磨いていかないと、チームの質も上がっていかない。彼も日々努力しているし、コミュニケーションを取りながら改善されていくことを期待しています」

 18日のグループリーグ第4節で名古屋グランパスに敗れるまで、サンフレッチェはYBCルヴァンカップでも無敗を続けていた。リーグ戦でリザーブに回る選手たちが、同じく堅守から勝ち点を伸ばす軌跡が、チーム全体に相乗効果をもたらしていると城福監督は手応えを深める。

「紅白戦では実はサブ組が勝つことが多いんです。ちょっとでも気を抜けばサブ組に取って代わられるという、競争の激しさというか、いい意味での危機感も我々のエネルギーに変わっている」

 マリノスとの第7節でボランチを務めた吉野恭平は走行距離12.930km、20回を数えたスプリントで勝利に貢献した。期限付き移籍していたJ2の京都サンガから約1年半ぶりに復帰した、23歳のホープの存在もまた稲垣を刺激し、成長させる糧になっている。

「細かいところで言えばいろいろありますけど、たとえば自分たちがボールを握ったときにどこへボールをつけられるのか、という点やポジショニングとかがまだまだですよね。チームとしても個人としても、もっともっとやらなきゃいけないと思っています」

 2位のベガルタ仙台に勝ち点で7ポイント差をつけ、開幕前の芳しくない下馬評を覆すような快進撃の中心にいても、「城福イズム」の申し子とも言える稲垣はまったく満足していない。武器をさらに磨きあげ、課題を克服するための努力を積み重ねながら、サンフレッチェの選手たち全員の思いを代弁するように、豊穣の秋を見つめて全力でいま現在を駆け抜けていく。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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