メンデス氏による古豪の一大改革
一方で失敗例もある。2014年、深刻な経営難に陥っていたスペインの名門バレンシアに、“救世主”としてシンガポール人投資家のピーター・リム氏をオーナーとして送り込んだ。この買収劇は成功するかに思われたが、近年の成績を見る限り完全な失敗に終わった。
自らの息のかかったヌーノを監督として、さらに多くの選手のバレンシア移籍も成立させながら、昨季は2部降格寸前まで追い込まれた。ピーター・リム氏が資金を出し渋るなど、マネジメント面での不手際も失敗の要因だった。
とはいえメンデス氏の影響力は母国ポルトガルのほか、スペインやイングランド、さらに東はロシアまで欧州全土に広く及んでいる。そして、新たに目をつけたのが2部で低迷していたウォルバーハンプトンだった。
アドバイザー的役割でウォルバーハンプトンの経営に関与し始めたメンデス氏は、昨季開幕前からその辣腕を遺憾なく発揮した。良好な関係を築いているベンフィカやモナコなどから自らの顧客であるポルトガル人選手を中心に大量補強を敢行。新オーナーである復星集団の資金力も活用し、移籍金だけで2部では異例とも言える3300万ポンド(約50億円)を動かした。
だが、唯一の誤算が監督選びだった。当初はポルトやスペインユース代表の監督を歴任したフレン・ロペテギの招へいに動いたが、契約直前までこぎつけながら、元バルセロナのGKがスペインA代表からのオファーを受けたことで取引が破談となる。
その後、元イタリア代表の伝説的GKであるワルテル・ゼンガを監督に据えた。ところがこれがうまくいかず、就任から約3ヶ月経った2016年10月に解任。後を引き継いだポール・ランバート監督もチームを立て直せず、24チーム中15位というチャンピオンシップ復帰後最低成績でシーズンを終えることになる。
それでも諦めないのが大物顧客を大量に抱えるジョルジュ・メンデスという男である。今季は、ジェスティフト社設立当時、若手だった頃からサポートしているヌーノを監督としてウォルバーハンプトンに呼び寄せた。バレンシアでの挑戦が失敗に終わっていたものの、最終的にはプレミアリーグ昇格という形で監督としての手腕が疑いのないものだったと証明することになる。