人々から真に愛されるクラブではない
今夏で契約が切れるエメリ監督が来季も指揮をとると思っている人はほぼいない。しかし彼自身はあえて、自分が離脱することを完全には肯定しないつもりなのだろうか?
アル・ケライフィ会長は「いまこのクラブには監督がいる。まだ誰とも契約していないし、したらご報告する」と話している。メディアの間で最有力候補に挙がっているのは、ドルトムントを率いていたトーマス・トゥヘル監督だ。
ただ、カタールのお偉方は、自分たちが予想していたよりも、欧州で天下をとるのは難しいことだと実感し始めているのではないかという気がしている。
ASローマは、CL準々決勝で第1レグの4-1というハンデを第2レグで3-0と覆し、バルセロナを締め出した。それを実現するのに、300億円もの大金は使っていない。
大金を積んでビッグネームの選手を連れてきても、ある程度のところまではいけるが、その先のハードルはまた一段と高いのだということに気づいた彼らはこの先どういう戦略をとってくるのか?
「なんとか2022年のカタール開催のW杯までは。でもそのあとは・・」というのが、ここ最近のプレスルームでの合言葉だが、まずはこの夏どう動くかだ。さらなる大物を連れてくるのか。手元にある人材を熟成させる方向でいくのか。
それにしても、リーグチャンピオンでありながら、CLから敗退したとたん自クラブのサポーターにも愛想をつかされ、話題にものぼらないクラブであるという点についても、お偉方は一度考えてみるべきだろう。
スター選手個々の個性で成り立っているだけで、チームとしてのキャラクターには乏しいままだ。昔からの忠実なファンももちろんいるが、今シーズンになって1000万人を突破したというSNSのフォロワー数や観客動員数が示すほど、人々から真に愛されるクラブにはまだなっていない。
お金で愛は買えない、というのは、どうやらフットボールの世界でも同じみたいだ。
(取材・文:小川由紀子【フランス】)
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