複数得点が奪えない。失点が止まらない
攻撃面では圧倒的なまでのボールポゼッションで試合の展開を支配できているだけに、ゴールを奪えないところ以外ではポジティブな要素が大きく見える。だが、見逃していないだろうか。現時点で勝利したリーグ戦2試合はいずれも完封ゲームで(複数得点できていないので当たり前だが)、結果が出ていない試合は失点しているのである。
そして、その失点の数が例年に比べて多くなっている。エリク・モンバエルツ前体制下での3年間、8節終了時点での失点数は2015年が「9」、2016年が「8」、2017年は「9」だった。一方、今季は8節終了時点で「11」もの失点を喫している。
マリノスのイメージといえば「堅守」だったが、今季はチームに大きな変化を加えたことでその持ち味が薄れてしまっている。中澤佑二曰く「1点を取ることに対して体力と集中力を使うサッカー」の中で「あっさり点を取られちゃうと、チームとしてのテンションがガタッと落ちちゃう」という脆さが同居している。
チーム全体を攻撃的に押し上げてボールを握り続けることで、ゴールに向かうリスクを冒しつつ同時にゴールを奪われるリスクを抑えるのがポステコグルー監督の考え方。ただ常に失点のリスクをゼロにすることは難しく、一瞬の隙を狙われることもしばしばある。
それが神戸戦でスコアボードに刻まれた。マリノスの先制点から約10分後、ほんの一瞬フワッと集中が切れたような瞬間を目撃した。それが三田啓貴の同点ゴールにつながった。終盤の79分には中盤でボールを失ったところから、前がかりになったサイドの背後のスペースを効果的に使われ、電光石火のカウンターで渡邉千真に逆転ゴールを奪われた。
残された時間は10分とアディショナルタイムのみ。すでに運動量が落ち始めていたマリノスには明らかに焦りが見られ、らしくないイージーミスを連発した。連戦の影響で体力面も厳しく、終盤は効果的な攻撃を見せることができなかった。
ディフェンスラインの背後に大きなスペースを作って攻める以上、ある程度カウンターを食らうリスクは覚悟しなければならない。指揮官もその点は承知しているし、相手も当然研究した上でそのスペースを突いてくる。そういったことを踏まえたうえで、もう少しボールを奪われた際の守備への切り替えにおけるアプローチを工夫し、バランスを整えなければならないだろう。