ガス欠後に訪れた劇的な幕切れ
2戦合計スコアを3-2とされたジネディーヌ・ジダン監督は、後半の頭で動く。ガレス・ベイルとカゼミーロを下げてL・バスケスとマルコ・アセンシオを投入し、両者をサイドに置いて4-2-3-1に修正した。ことごとく突破を許していたサイドのケアを意図したことは明白だが、ゲームを落ち着かせるどころか逆になり、ユーベには3点目が入った。60分のゴールは、またも右からのクロスだったのだ。
ユーベは右サイドでパスを交換。これに対しマルセロとアセンシオがマークにつくが、ドリブルで下がってきたドグラス・コスタにアセンシオの寄せが遅れて、スペースを与えてしまう。そこからアーリークロスがゴール前に入ると、なんとマテュイディがフリーになっていた。カゼミーロがいたらフォローできたであろう場面だが、ケイロス・ナバスは慌てた末にキャッチしたボールをこぼす。これをマテュイディに押し込まれてゴールが決まった。
早々に交代枠3人を使い切ったマドリーを尻目に、あとは延長戦まで使って勝負を決めれば良い状態。もはや試合運びの上で後手に回っているのはジダンの方だ。アッレグリ監督は、どこで交代カードを切るか頭の中でじっくりと算段をしていたに違いない。
ただ、完璧なまでに進んでいたユーベの戦略には誤算が生じた。前半から飛ばし、攻撃を進めていた選手たちの足が止まったのだ。パワープレーを続けていたマンジュキッチは縦に飛び出せなくなり、前線に果敢に走り込んでいたケディラの運動量が減り、ドグラス・コスタのキレもなくなった。
マドリーがボールをキープする時間が増え、挙げ句の果てにあの93分のプレーだ。相手を散々苦しめていたパワープレーを逆にやられる。しかもトニ・クロースのミドルパスをヘディングで落としたのは、C・ロナウドだったのである。
絶望的な状況に立たされたユーベは、全員の意思が統一された実直なプレーで勝負を一度は展開を五分に戻した。それだけに足の止まった最後の時間帯で、華麗さが売りの相手のエースに地道なパワープレーでPKを演出されたのは、なんとも皮肉な結末だった。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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