「ヴァイッドに『手抜き』はありえない」(バロンケッリ氏)
柔軟性のなさがハリルホジッチ監督のキャリアに影を落としているのは事実だが、彼が何があっても信念を曲げない人であることがわかりきっている以上、その彼を招聘する側が、それでも彼を起用する目的をクリアにしておく必要がある。
バロンケッリ氏はこうも言っていた。
「選手によっては、その厳しさについていけない者もいるだろうが、ヴァイッドに『手抜き』はありえない。どんな小さなことでも、彼のやることに『偶然』はない。すべてが計算されて計画に基づいたことなんだ。それにメディアはヴァイッドに『軍曹』のようなレッテルを貼るが、むしろ一番遠いのがこのタイプ。たしかに厳しいが、選手たちのことは徹底してプロテクトする。言うなれば厳格な父親といった感じだ。彼は惜しみなく持っているものを与える寛容な人間だよ」
ハリルホジッチ氏が、日本代表の発展のために、自分が持てる知識や術をすべて授けようと尽力してくれたことは間違いない。
ただその手法があまりに一徹で、表現方法もストレートすぎたために、そういったアプローチに馴染みがなくて拒否反応を示したり、対応の仕方に戸惑った関係者や選手はいたかもしれない。ある程度理解できるヨーロッパ人でさえ受け入れ難かった人もいたのだから、対人面の文化がまた違う日本ではなおさらだ。
ただ、そのあたりはハリルホジッチ氏を招聘する時点である程度予測できたことだろうから、「コミュニケーション問題で解任」というのは腑に落ちないというか、残念というか…。ハリルホジッチ氏にしても、母国語を使った方が、より細かな部分まで伝えられるだろうから、表現方法も変わっていたのに、とも思える。
まあ、当事者だけが知る諸々の事情もあるのだろう。いまはただ、ハリルホジッチ氏の今後の活躍、そして西野朗新監督とともに再出発する日本代表の善戦を祈るしかない。
(取材・文:小川由紀子【フランス】)
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