リールの英雄になったハリルホジッチ
ヴァイッド・ハリルホジッチ氏の突然の解任には驚いた。
日本サッカー協会から発表があったちょうど1週前の4月1日、ハリルホジッチ氏はフランスのテレビ局『TF1』の日曜朝の定番サッカー番組、『TELEFOOT』のデジタル版にゲストで招かれ、日本代表監督としてワールドカップに臨む抱負を語っていたのだ。
3月の代表戦の後にハリルホジッチ氏と電話で話したというアルジェリア人記者は、「その時からどこか怪しい雲行きをヴァイッドは感じているようだった」と話していたが、「解任になった今から思えば…」、という部分もあるだろう。実際のところ、この番組に出演していた時の彼に、ワールドカップ本戦まで2ヶ月というこのタイミングで解任になるという出来事は、微塵でも想像できていただろうか。
ハリルホジッチ氏は、個性が強烈なだけに、功を奏するか否かがはっきり分かれるタイプだ。
たとえば2部リーグへ転落したところからチャンピオンズリーグ出場へ、魔法のような復活劇を実現したフランスリーグのリールでは、彼はいまだにレジェンドであり、アンバサダーにも任命されている。
先日もリールの駅前で食事をしていたら、隣のテーブルの紳士から「日本人ですか?」と尋ねられ、「そうだ」と返すと、彼はうれしそうに、「我々にとって英雄であるヴァイッド・ハリルホジッチ氏はあなた方の国の代表監督ですよね。ラッキーですよ、日本は強くなる」と話しかけてきた。
今頃この御仁はこの顛末を残念がっていることだろうが、リール時代の関係者も、ハリルホジッチ氏との思い出は喜んで話してくれる。
当時のクラブ幹部や主力選手たちは揃ってハリルホジッチ氏の印象を、「自分にも他人にもものすごく要求の厳しい人」と語るが、それでもついていくことができたのは、「彼についていけば結果が得られるとわかっていたから」だというのだ。
当時のキャプテン、パスカル・シガンはこう断言していた。
「それがすぐなのか、数年かかるのかはわからない。ただ、ひとつだけ確実に言えることがある。ヴァイッドのメソッドに従っていれば、いつか必ず結果が出るということだ」
彼の要求は最高に厳しいが、言うことは間違っていない。辛抱して続ければ、必ず成果が出るのだと。