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バルサ逆転敗退の衝撃を生んだ要因とは? ローマが構築した完璧なプランと指揮官の英断

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

指揮官の綿密な準備。用意されていた「3点目」へのプラン

ディ・フランチェスコ
エウゼビオ・ディ・フランチェスコ監督の英断がローマに劇的な逆転CLベスト4進出をもたらした【写真:Getty Images】

 さらに彼らは、3点目を奪うべく攻撃力を高めるプランもちゃんと用意していたのである。試合が残り20分を切ったところで、ウイングに急成長中のジェンギズ・ウンデルと、ステファン・エル・シャラーウィを投入。縦への突破力とシュートへの積極性を保証し、サイド攻撃にはさらにキレが増す。

 そして82分、ウンデルが右サイドから仕掛けた末にコーナーキックを獲得。前半からセットプレーでは惜しいチャンスを作り続けていたローマはこのチャンスをきっちりと活かし、マノラスがニアから頭で押し込んだ。

 ローマの攻撃は、この試合に限った秘策というわけではなかった。3トップにサイドを絡めた攻撃のシステムも、少ないパス交換で縦を破る連係も、シーズンを通して仕上げられていたのである。崖っぷちの大一番で出たのは、そういったものの成果だった。

 もちろんその力を引き出すことにつながった要因は、ディ・フランチェスコ監督による綿密な準備にある。直前のリーグ戦、フィオレンティーナ戦ではバルサ戦2ndレグを見据えて戦力を温存。その結果0-2で破れることになるのだが、「その日の夜は悔しくて眠れなかった」という彼は3バックの導入を着想したのだという。「選手たちはこうなることを信じて闘っていた」と試合後に語ったが、それを誰よりも信じ抜いていたのはこの人に他ならなかっただろう。

 それに引き換え、バルセロナのなんと淡白だったことか。セカンドボールを拾われてローマの速攻を喰らっていたのは、1stレグも同じだったのである。そのケアを軽視した上に、セットプレーの守備でも常にマークが外れるなど隙は多かった。中2日という条件はローマも一緒なので、コンディション調整は言い訳にならないだろう。

 間違いが起こる可能性をゼロに近づける努力を怠ったチームと、突破を信じ勝負を捨てず、最善の努力をしたチーム。2ndレグの結果は、なるべくしてなったものなのかもしれない。

(取材・文:神尾光臣【イタリア】)

【了】

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