ローマが採用した奇策3バック
戦前から絶対的な不利が予想され、下馬評どおりに1stレグでは1-4。バルセロナのチャンピオンズリーグ(CL)準決勝進出が事実上決まったと誰もが信じたであろう劣勢を、ローマはひっくり返した。
リオネル・メッシやルイス・スアレスを擁する攻撃陣に1点も許さず、しかも3点を奪うという無理なミッションを完遂。相手に枠内シュートを2本しか許さない一方で、サイドを使った速攻とセンターFWエディン・ジェコの強さを軸にした攻撃でシュート16本を浴びせる。戦略が完璧に機能したことは、スタッツにもあらわれていた。
グループリーグ第4戦でチェルシーをやり込めた試合も3-0。エウセビオ・ディ・フランチェスコ監督率いるローマは、またも戦術的な攻撃サッカーで格上を破った。
まず勝利をもぎ取ったポイントの1つは、普段の4バックではなく3バックを用いた組織守備が機能したということにある。1stレグでは4失点を喫したが、そのうち3点はオウンゴール2つとエリア内でのミスを拾われたもの。センターラインの枚数を増やし、余裕を出すという発想は間違っていなかった。
事実、フェデリコ・ファシオを右に、ファン・ジェズスを左に回し、対人とスペースの両方に強いコンスタンティノス・マノラスを中央で自由に動かす3枚のセンターバックは、バルサの攻撃陣に対し常に余裕のある対応を見せていた。
しかし守備において決定的だったのは、相手のビルドアップを断ち切った前線のプレスだった。ローマのフォーメーションは表記上3-4-1-2となっていたが、実際のシステムは3-4-3だ。普段は中盤を務めるラジャ・ナインゴランは実質的な左ウィングとして、また先発に抜擢されたパトリック・シックは右ウィングとして、それぞれ前線の守備を受け持った。プレスで相手センターバックとサイドバックのパス交換を遮り、また守勢に回ればサイドをカバーするという役割が彼らには課せられていた。