アルジェリアでは批判を物ともせず。だが日本では…
2011年から率いたアルジェリア代表でも、2013年に行われたアフリカネーションズカップで惨敗してから、厳しい批判にさらされた。しかし、ブラジルワールドカップのアフリカ予選でベナン、ルワンダ、マリとの2次予選を突破し、さらにブルキナファソと直接対決となった最終予選を制して本大会出場に導いたハリルホジッチ氏は、2014年3月にスロベニアとの親善試合に2-0で勝利。最終選考を前にした6月1日のアルメニア戦も2-1と競り勝った。
さらにワールドカップ本大会前のラストマッチでもルーマニアを2-1で下し、親善試合に3連勝しているのだ。今でこそアルジェリアでは神様のように称えられるが、当時はいつ解任されてもおかしくない状況にあったとも聞く。その中でナビル・ベンタレブやリヤド・マフレズといった新戦力にチャンスを与えながらも、結果を出すことで周囲の声を封じていたのだ。
また選手との緊張感も絶えず、チーム内で起こった“水タバコ事件”に関し、メディアに向けて監督を批判したリヤド・ブデブスを代表から外したこともあった。またカリム・シアニという実績十分な選手の招集外を常に追求されるなど、日本におけるそれと変わらないような向かい風にさらされながら、着実に前進して本大会に行きついた。
常識的に考えれば狂気の沙汰とも取れるこの時期での監督解任だが、多くの時間を日本サッカー協会本部の部屋で共に過ごしながら、イエローシグナルをキャッチできなかったのだとしたら非常に不幸なことだ。
マリ戦とウクライナ戦を良い結果で終えていれば、内部的な摩擦がくすぶっていようと、勝利が封印しただろう。そこでの勝利はもちろんワールドカップ本大会での勝利を何も約束するものではないが、外国人監督が無事に本大会に辿り着くために強く握りしめるべき命綱だったのかもしれない。
(取材・文:河治良幸)
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