ナイーブな選手たちと戦術への理解不足
日本代表に復帰した大島僚太【写真:Getty Images】
ハリルホジッチはロシアワールドカップで勝つために呼ばれた監督である。勝つためのプロセスを構築し、そこへのノイズはできるだけ排除したい。頑固で人事には冷徹。極めて厳しい監督だが、それは就任前から分かっていたことである。
だからこそ選手に高いレベルを要求し、達しない選手には容赦しない。それを強権だ、恐怖政治だと恐れるのであれば、代表選手としてあまりにナイーブではないだろうか。ワールドカップを想定したレベルに付いてこられない選手が、本大会で戦えるはずがない。
さらに言えば、ハリルホジッチは冷徹さのなかにも平等に評価する公平さもあった。例えばMF大島僚太。一度は大きなミスで代表を外され長らく招集されなかったが、Jリーグで成長を続けると再び代表に呼び戻した。
また、選手と話し合う門戸は開かれていた。それが十分であったかどうかはともかく、合宿中に選手が個別に監督の部屋に行き、一対一で面談することもしばしばあった。時に激論をかわす選手もいたという。コミュニケーションがとれないわけではない。
戦術に関しては、選手たちの理解が不十分だったのではないか。「縦に速く」は、守備を意識してのもの。中盤でボールを奪われてショートカウンターをくらうリスクを避けるために、手早く前線にボールを送る。故に中盤でのビルドアップを求めていない。「つなぐ」必要はないのである。
ただし、ハリルホジッチは「最後の3週間で仕上げる」と明言していた。この時期でも浸透が十分でないことは折り込み済みだったはずである。メンバー発表を2段階方式にするとしていた理由もここにあるのではないか。最後にみっちりと戦術を叩き込み、それでも理解できない選手をふるいにかける、と。今となっては単なる夢想でしかないが。