ハリルと選手との溝は今に始まったことではない
日本代表を率いていたヴァイッド・ハリルホジッチ監督【写真:Getty Images】
4月9日、ヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督の解任が発表された。日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長は記者会見に1人で登壇し、契約解除に至った理由等を説明した。
「解任理由は1つでない」としたものの、最も強調していたのは選手とのコミュニケーションの問題と信頼関係だ。要するに選手と監督との間には溝があり、それらを鑑みると「危機的状況」なので解任、と。
田嶋会長が「選手」を強調したことは大きな問題がある。今後選手たちはうかつに協会関係者に愚痴の1つもこぼせなくなる。自分たちが原因で監督がクビになったのだ。当惑する選手もいるのではないか。
逆に、気に入らない監督だった場合、上手いこと密告すれば追放できる。悪しき前例と言える。今回もしそのような造反者がいたのなら由々しき事態である。そんなことを許していては未来永劫ワールドカップで上位進出など不可能だ。
とはいえ、ハリルホジッチと選手との間には溝があったのは事実である。3月の欧州遠征ではわかりやすく顕在化したが、今に始まったことではなく、常に誰かしらは不満を抱えていた。
例えば、練習や試合で監督の指示通りのプレーができないと選手は大きく評価を下げた。今後代表に呼ばれなくなるのではないかと恐れるあまり、思い切ったプレーがしにくいという声もあった。実際に呼ばれなくなった選手は多くいる。
戦術への戸惑いもあった。「縦に速く」はハリルホジッチ監督の代名詞だが、具体的な方法論が示されないことも多く、「どうしたらいいのか…」と。また、FWに手早くパスを出したとしても相手DFがいるなかで、全部のパスをFWが収められるわけではない。そうした時に「つないだ方が良いのではないか」と。
溝はあった。だが、これら2つの溝は埋められる可能性が大いにあった。