ヴァイッド・ハリルホジッチ氏は日本代表監督の職を解かれたが…【写真:Getty Images】
日本サッカー協会(JFA)は4月9日、都内で記者会見を開き、ヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督の解任を発表した。後任には技術委員長の西野朗氏が就く。
会見に出席した田嶋幸三JFA会長は「勝つ可能性を数パーセントでも上げるため」と語ったが、考えられる史上最悪のタイミングでの解任劇だ。ロシアワールドカップ開幕まであと約2ヶ月と迫った時期での監督交代。本大会メンバー23人を選ぶまでには5月30日のガーナ戦しか試合がなく、戦術を浸透させる時間がない。選手らの混乱は必至だ。
逆にワールドカップで対戦するコロンビア、セルビア、ポーランドは歓喜に沸いているのではないか。日本の混乱はもちろんのこと、これで日本代表の機密情報を入手しやすくなるからだ。情報源はハリルホジッチ前監督である。
ワールドカップは情報戦だ。いかに相手を調べ尽くすかにかかっている。日本とて例外ではなく、対戦相手は勝つために必死で情報を入手する。日本との関係性が切れたハリルホジッチ氏と対戦相手である3ヶ国が水面下でつながる可能性は否定できない。
ハリルホジッチ氏は任期中の約3年間で日本の選手を隅から隅まで熟知した。精神的なものも含めて弱点は把握済み。対戦相手にそれを話せば、当然日本としてはピンチになる。
もちろん、ハリルホジッチ氏がそのようなことをするとは考えにくいが、あくまで「考えにくい」というだけであって何があるかわからない。契約上、当然このような情報漏えいは禁止されているだろうが、果たしてそれをどこまで調べられるというのか。ハリルホジッチ氏の携帯電話に盗聴器でも仕込まない限り不可能だ。
日本の弱点が丸裸になっていた――。それを証明するのは極めて難しい。ただでさえ格上の相手がさらに日本に熟知し、鬼に金棒となるだろう。
ワールドカップはチーム内で一致団結すれば勝てるという簡単なものではない。相手がいて、相手も必死なのだ。昨日までの味方が裏切らないと考えるのは、あまりにも甘すぎるのではないか。
(取材・文:植田路生)
【了】