地域に浸透した「湘南スタイル」
その中の1冊が、今年2月に株式会社カンゼンより発売された『育成主義 選手を育てて結果を出すプロサッカー監督の行動哲学』だった。一読して抱いたチョウ監督への感想を、松岡室長は「すごく求心力がある方だと思いました」とこう続ける。
「指導論もそうですけど、人間作りみたいなところをすごく大事にされている。そこにすごく共感する部分がありました。もちろんチームは大事ですけれども、所属する選手のこともすごく考えた運営をやっていて、そういったところも逆に(ライザップグループが)選ばれる理由だと思いました。
私どもはライザップグループのなかでさまざまな会社経営を経験したきましたので、クラブの経営自体をよりよいものにしていくことと、育成という部分にライザップのメソッドを入れることで、さらに進化させることができる。経営と育成の2つの観点で関与できることがあるんじゃないかと」
今回の連結子会社は1年半ほど前に、責任企業をもたない経営体制からの脱却を図るために、ベルマーレの眞壁会長が申し出たものだった。そして、実際にライザップグループが交渉のテーブルについた理由のひとつが、ベルマーレが育成型クラブとして高く評価されていた点だ。
ライザップグループは「『人は変われる。』を証明する」を、企業理念として掲げていた。一方でベルマーレも市民クラブとなった2000年以降で、クラブのアイデンティティを鮮明にして生き残っていくうえでも、地域密着と育成を車の両輪として必死に稼働させてきた。
そして、育成組織を整備・発展させるための切り札として、2005年に迎え入れられたのがチョウ監督だった。ジュニアユースおよびユースの監督、トップチームのコーチ、そして監督を務めた14年間で、ベルマーレは「湘南スタイル」という合言葉を地域全体で共有するに至っている。
「個々が持っている能力をどれだけ引き出してあげるか、ということを普段から業務として追及しているんですけど、ベルマーレというチームも若い選手だけでなく、他のチームで怪我をしてなかなか実力を発揮できない選手がここで再生して、強くなることを実現させているチームでもあるので」
松岡室長がこう説明したのは、7日にホームのShonan BMWスタジアム平塚内で行われた「株式会社湘南ベルマーレ 第三者割当増資に関する記者説明会」の席上だった。