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アジア 7年前

本田圭佑の知られざる経営者としての「顔」。革新的な人事評価制度の導入はサッカー界に一石を投じるか

text by 植田路生 photo by HONDA ESTILO

サッカーに関する項目はほとんどない人事評価制度

本田圭佑
本田目指すものは「夢や目標を思い描いて走りつづけられる子どもを育てる」こと【写真提供:HONDA ESTILO】

 では、この人事評価制度はどのようなものなのか。例えば、こんな文言が並ぶ(文章は抜粋)。

「様々な社員の言動に対するリスクや影響を踏まえて、担当ブロックの全員がソルティーロの一員としての自覚を持った言動がとれるよう働きかける」
「生徒以上に考え、潜在的ニーズに合わせて必要なアドバイスを伝えている」
「管理職の社員を統括できる人材を育成すべく、部下1人ひとりに合わせた適切な対応を考慮し(中略)、仕事を通して部下個人に何が手に入るのか示している」

 直接的なサッカー指導というよりもマネジメントに重きを置いていることがよく分かる。「大手企業が導入しているような人事評価制度をサッカースクールが取り入れたと解釈すれば良いと思います。スキルに関するものはほとんどありません。スポーツの分野でこのような取り組みは聞いたことがありません」と語るのはアビームコンサルティングのダイレクター、本多宏充氏。

 同社は企業の経営戦略の立案や業務のコンサルティング、IT支援など多分野でコンサル業務を行う総合コンサルティングファーム。SAPと長年パートナー関係にあり、ソルティーロの人事評価制度導入の際には全面的にバックアップした。

 アビームがまず取り組んだのはコンピテンシー(人材の要件、タイプ)の定義付けだ。コンピテンシーは行動特性や心構えともとらえることができる。ソルティーロにとって「目指すべき人材像とは何か?」ということである。ここを定めてから、実際の運用方法や仕組みづくりに初めて入れる。

 一般的にこのコンピテンシーの整理が最も大変だという。だが、ソルティーロの場合は違った。「実はそこまで難しくなかったです。というのは本田選手の考えは極めてとがっていた。いわゆる本田イズムとでも言えるのでしょうが、目指すべき点があり、そこに向かって整理をすればいいだけでした」とアビームのマネージャー、木下瑛博氏は語る。

 本田が目指すもの。それは「夢や目標を思い描いて走りつづけられる子どもを育てる」というもので、人の育成に特化している。技術的な部分にフォーカスしたり、何人をプロに、といったものではなかった。サッカースクール事業ではあるが、一般企業のそれに近いものだったという。

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