ドイツ代表におけるデータ革命。本田にとって嬉しい誤算
2014年、ブラジルワールドカップ。日本代表が力を発揮できなかった大会で圧倒的な強さを誇ったのがドイツ代表だ。準決勝で開催国ブラジルを7-1で破り、勢いそのままに優勝。そのドイツを裏で支えていたのがソフトウェア会社・SAPが開発したシステムだった。同社は膨大な量の試合を分析。データベース化し、サッカーに使える要素に落とし込んでいった。
分かりやすい事例で言えば、選手1人がボールを持つ時間までも徹底的に管理した。以前は3秒近くかかっていたものを、目まぐるしく変化する試合展開に対応するために、ブラジル大会の時には1秒未満にまで減らした。かつては無骨なスタイルだったドイツが、多くの試合のポゼッション面で優位に立っていた要因はここにある。
いわゆるデータ革命とも言うべき事案だが、ここに目をつけたのが本田だ。すぐにコンタクトをとった。
ところが、本田にとって嬉しい誤算があった。ドイツ代表の事例でスポーツ業界でも一気に有名になったSAPだが、サッカー専業企業ではない。「本田選手も最初勘違いしていたようなのですが、サッカーは弊社の数多くある事業の1つに過ぎません」とは同社社員。本業は企業向けビジネスソフトウェアのトップ企業で、人事制度や組織でのマネジメントに関するシステム構築も得意としている。
SAPとミーティングを重ねた本田は、練習の統一基準や疲労度の管理などチーム強化に関する部分を自身が経営に携わるオーストリアのSVホルンや幕張で活動をするユースチーム「SOLTILO FC」などで導入。同時に、ソルティーロにはSAPのソリューションを活用した人事評価システムを採用した。これが前述した革新的な人事評価制度へとつながっている。
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