急拡大するサッカースクール事業。そこでひずみも
これは革新的だ――。全容を聞いたとき、そう思った。本田圭佑は自身がプロデュースするサッカースクール「SOLTILO FAMILIA SOCCER SCHOOL(以下、ソルティーロ)」で、前例のない人事評価制度を導入した。
同様のものはマンチェスター・シティなどを束ねるシティフットボールグループが導入しているが、それはマーケティングやセールススタッフに対してのもの。現場のコーチ陣にまで幅を広げたものはおそらく世界初となる。
内々に見せてもらった資料には、およそサッカーとは無関係に見える用語ばかりが並ぶ。これを元にコーチなどスタッフの評価をしていくというが、果たしてこれをどうサッカーに落とし込んでいくのか――。そこにはサッカー選手・本田ではなく、経営者としての顔が垣間見られた。
本田が携わるソルティーロは2012年に開始したスクール事業。現在は国内外で70校以上にまで拡大した。将来的には300校にまで増やす計画だという。
急拡大していくなかで問題も発生していた。少人数事業だったときにはいわゆる「少数精鋭」。全体の意識も統一しやすく、本田の哲学を浸透させるのもそう難しくはなかった。だが、人が増えれば増えるほどそこは簡単ではなくなってくる。それぞれは懸命に指導していても目指すべき先が微妙にズレてくる。コーチ1人ひとりの能力はもちろん異なり、それぞれが歩んできたサッカー人生も違うからだ。
このままでは現状維持はもちろんのこと、300校への拡大も夢のまた夢。抜本的な改革は不可欠だった。
2014年、本田は動いた。きっかけは本田も日本代表の一員として出場していたブラジルワールドカップであった。