楽しくないはずがない
ブラジル選手の多くがそうだったように、マルセロもフットサルをやっていた。足裏を駆使したテクニック、自然に飛び出す股抜き、小さく鋭い振りのキック、敏捷なフットワーク、コンビネーション・・・サッカーのフィールドでもマルセロのプレーはフットサル的だ。
そうした技巧的で華やかなプレースタイルは、前向きにプレーできるサイドバックだからこそといえる。フィールドの中央でマルセロのようなプレーが許されているのは、メッシやネイマールといったごく一部の選手だけだ。
中央ではどこから敵が来るかわからない。1人をドリブルで抜くなら、2人目も抜く力量が必要になる。すぐに敵が押し寄せてくる人口密度の高い中央でドリブルするなら、3人を手玉にとれる選手でないとあまり意味がない。しかし、サイドなら少なくとも背後はタッチラインなのでそこから敵は来ない。2人目も見ながら1人ずつやっつけていく余裕がある。もっともマルセロは3人を手玉にとれる力があり、たぶん中央でもプレーできるだろう。
マルセロはいつも楽しそうだ。先輩のロベルト・カルロスもそうだった。上手くて速くて、スタミナもある。左利きという特権階級のうえに、攻撃では好きなように仕掛けていける。本人の性格もあるのだろうけど、これで楽しくないわけがない。踊るように歌うようにプレーするブラジルのサイドバックは、いつもサッカー好きを幸福な気分に満たしてくれる。
(文:西部謙司)
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