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Jリーグ 7年前

7km走るGK飯倉大樹の頭の中。横浜FMの新戦術を支える“クレイジー”守護神の理想像

text by 舩木渉 photo by Getty Images for DAZN

理想は攻撃も守備も「全部やる」

テア・シュテーゲン
飯倉大樹は理想のGKの1人にバルセロナで活躍するドイツ代表GKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンを挙げる【写真:Getty Images】

 普段から「俺はクレイジーだからね」と話している飯倉らしいといえばいいのだろうか。「オーソドックスなんて不必要なもの」なのである。それはポステコグルー監督が就任するずっと前から変わらず頭の中にあるGKとしての理想像にもつながる。

「ゴールも守れるし、今みたいなプレーができるのが俺の理想だと思っている。(レネ・)イギータまではいかないけど、結構前にも果敢に出ていけるし、(マルク=アンドレ・)テア・シュテーゲンみたいにしっかりつなぎもできる世界のGKみたいな。小柄なGKでいうならテア・シュテーゲンとか、(イケル・)カシージャスとか(ホセ・マヌエル・)レイナとか、そういう流れを変えられるような守備ができたら、俺の理想像かな。(攻撃も守備も)全部できるのが一番ベストだと思う」

 イギータは1980年代後半から1990年代前半にかけて活躍した元コロンビア代表GKで、ペナルティエリアから飛び出してスイーパー的な役割を果たすだけでなく、ドリブルで攻撃参加することもあった「超攻撃的GK」である。イングランド代表MFジェイミー・レドナップのシュートをはじき返した「スコーピオンキック」でも有名だ。

 攻撃にも守備にも関わり続けて試合の流れを変えるGK。そんな今のスタイルは「GKの感覚値じゃなくて、フィールドプレーヤーの感覚値がないとできないこと」だと飯倉は語る。それは自らのルーツでもあるマリノスの下部組織が大事にしてきた考え方の結晶である。

「マリノスのGKってただ守るところだけに特化していない。テツくん(榎本哲也=現浦和)もそうだったけど、見え方としてはサッカーが上手くてGKをやっているみたいなところがある。1人のサッカー選手がGKをやっているようなイメージだから、GKだけじゃなくてサッカー選手としてのセンスが高い選手にああいうことをやらせたらできると思う。その他のGKはなかなかフィットしないんじゃないかな」

 自分にしかできないことをやっている感覚が、飯倉の心と体を刺激し、プレーを研ぎ澄ましていく。

「監督がリスクを負ってでもいいから裏のケアをしろと言ってくれている。なかなかGKの本質上そういう監督が少ない中で、チャレンジさせてもらっていることはすごくありがたい」

 ボランチをやっていた小学生時代からマリノスで育ち、中学生でGKに転向。そのままトップチームに昇格し、ロッソ熊本(現ロアッソ熊本)に期限付き移籍していた1年間を除いて、プロキャリアの13年間をマリノスに捧げてきた。世代別代表歴もA代表歴もないが、ベンチに座る日々や病も乗り越えて地道に積み上げたJ1通算出場数は200試合に手が届くところまできている。

 そして今季、ようやく自分の理想とするプレーを発揮させてくれる監督に出会った。「GKの仕事」だけでない部分も華麗にこなし「流れを変えられる」守護神に。飯倉の理想を追い求める旅は始まったばかりだ。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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