予測するための材料集め。時には自ら動き…
飯倉と同じように足もとの技術に定評のある浦和レッズのGK西川周作は、最終ラインとの距離を常に30mほどに保ってプレーしているが、それすらも「遠い」と思うほど、トリコロールの背番号21はフィールドプレーヤーと近い距離感で常にプレーに関わり続ける。
では、どのように予測しプレーの判断基準を定めているのか。飯倉は試合前から様々なものを観察して自分のプレーに反映させていた。
「ピッチ状態にも大きく左右されるんだけれども、サガン鳥栖戦(J1第2節)以外は割とピッチが濡れていたから、そういうときにはボールが滑るというのを考える。あとは、相手のキックモーションや、フリーの選手がどこにいるか、スペースはどこにあるか、相手がどんなボールの持ち方をしているか…そういうところを見ながら自分のポジションの高さを決めている。
もちろん相手の動き出しも見ながら。パスが出そうだなとか、体の動きとか。あとはどれくらいロングボールを蹴れるかも、試合前にスカウティングして、(シュートを)打たれそうだと思う選手がボールを持てば少し下がったりするイメージはある」
こうして見ると「予測」に関して少々受け身な印象も受ける。だが、チームが勝つために攻撃の起点にもなりうる飯倉は、「予測」の材料を自らアクションを起こして集めるのである。リーグ戦の今季初勝利を挙げたJ1第4節の浦和レッズ戦から2つの場面を例に解説してもらった。
1つ目は40分、DF松原健から頭でバックパスを受け、ボールをキャッチしてすぐにライナー性のパントキックを右サイドに蹴ったシーンである。
「(ゴールに向かって)2、3手先までイメージしているというと、自分本位になってしまう。まず、自分のボールを動かすという『手札』を出した時に相手がどうするかを見たかった。レッズのディフェンスラインがいて、自分が前に蹴ったことによってレッズの前の選手がプレスバックするパターンと、そんなに下がらないパターンがある。そういうのを見たりしている。
あの状況でパッと(攻守が)切り替わった瞬間だったから、少し間延びするかもしれないと思って、右サイドにストンと狙った。『手札』を1枚出すことで、相手の動きやオーガナイズを見極めて、時間帯などでプレーのチョイスを変えている」
バックパスを受けても、そのまま足もとにボールを置いて近くの味方につなぐことが多く、飯倉がパントキックで遠くに展開する場面は少ない。だからこそ「相手はこちらがショートパスだと思って結構前に来るから、裏にストンと蹴ったりすると、意外と1対1になったり、相手の頭にも裏というのが植えつけられる。そうするとまた繋ぎやすくなったりする」のである。