城福浩監督が送った最大級の賛辞
思わず苦笑いを浮かべた。川崎フロンターレとの無敗対決を1‐0の完封劇で制し、首位に浮上した直後の敵地・等々力陸上競技場の取材エリア。幾重ものメディアの輪に囲まれたサンフレッチェ広島のFW工藤壮人は、ほんの一瞬ながら戸惑った表情を見せていた。
3月31日に行われた、明治安田生命J1リーグ第5節後の公式会見。今シーズンからサンフレッチェを率いる城福浩監督は、シュートを1本放っただけでゴールを奪えないまま、最初の交代として59分にベンチへ退いていた工藤へ最大級の賛辞を送っていた。
「思い描いていた守備のスイッチを、工藤が非常によく入れてくれていた。本来はその後にペナルティーエリアのなかで仕事をしたかったと思うし、僕もさせたかったんですけど、大事なミッションのひとつを彼がやり続けてくれたことで、組織として崩されることはがなかった」
指揮官の言葉を伝え聞いた瞬間の工藤の反応が、冒頭で記した苦笑いと一瞬ながら戸惑った表情だった。リーグ屈指の破壊力を誇るフロンターレの攻撃を寸断し、チームの無敗キープに少なからず貢献できた手応えと、ストライカーが抱く矜持の間で心が揺れ動いていたのだろう。
「監督からは守備のスイッチのところは言われていたのでもちろん意識していましたし、相手は本当に嫌がっていたというか、ファウルを含めて止めていたのがジャブのように効いてきたと思っています。後半の半ばくらいからは気持ちも切れてきたのか、フロンターレらしくないミスも多かった。
そこ(守備)に関しては皆さんがどのように評価するか、というところにかかってくると思いますけど、そこまで嬉しいかと言われればどうなのかな、という部分があります。点を取るというところでは正直、チャンスそのものがほとんどなかった、という感じを僕自身は受けているので」