覚悟の移籍。洗練されたスタイルで中盤の新たな選択肢に
今季のマリノスは様々な中盤3人の組み合わせを試してきた。J1開幕戦のセレッソ大阪戦と第2節の柏戦は、アンカーに喜田拓也、インサイドハーフに天野と中町公祐を据える逆三角形の形。喜田が負傷で離脱した第3節のサガン鳥栖戦は扇原をアンカーに配置してインサイドハーフに天野と中町を起用した。
さらにリーグ戦初勝利を挙げた第4節の浦和レッズ戦は3人を正三角形に配置し、ダブルボランチに扇原とダビド・バブンスキー、トップ下に天野でスタート。前半途中で天野とバブンスキーの位置を入れ替えるなど試行錯誤の末に勝利を手にした。
交代やYBCルヴァンカップなども含めれば、さらに多くの組み合わせが起用されてきた。そして、それぞれにメリットとデメリットがある。
例えばアンカーを置く形であれば攻撃のスイッチがわかりやすくなる反面、そこを狙われる可能性が高くなり、脇のスペースを突かれるリスクも高い。ダブルボランチは最終ラインからボールを引き出しやすくなり、3人のポジションチェンジがスムーズでパス交換も多くなるが、ゴール前に侵入する選手の数が減ってしまうことがある。
とはいえそれぞれのメリット・デメリットを対戦相手によって使い分けられるようになれば、チームにとって大きな武器となる。大津は中盤の選択肢を広げる貴重なオプションになりうる可能性を十二分に示した。
オリヴィエ・ブマルの加入によって外国人選手のうち1人は必ずベンチ外になる状況、そして週2試合ペースの15連戦が始まることも考えれば大津の存在価値は大きい。浦和戦と清水戦のわかりやすい違いを挙げれば、積極的にボールに触り一撃必殺のスルーパスやドリブルで違いを生むバブンスキーと、フリーランや細かい連係で味方の力を引き出す大津という比べ方もできる。
「僕はフリーランを増やしていけたら。トップ下の選手は動き出しの部分でスペースを作ったり、自分が受けたり、その区別をしてプレーした方がいい。非常にパスを回すセンスのある選手たちが多いので、そういった意味ではもっともっと(フリーランを増やしたらいい)。今日やった中でもすごくいい部分や使える部分が、プレー中に感じられましたし、もっともっと良くなるんじゃないかなと思います」
大津はピッチの中で確実に手応えをつかんでいた。「中途半端な覚悟で移籍はしてきていない。もちろんこのチームを背負っていけるプレーヤーになるつもりでいるので、その覚悟はできています」という新体制発表会見での言葉に偽りはない。
「いま一番体が動く歳でもあるので、もっともっと自分の可能性を広げていきたい。若い選手だろうが、ベテランの選手だろうが、誰もがスタートラインは一緒だと思う。その中でも自分はもっともっとチームを引っ張っていける位置にいかなきゃいけない」
若い頃のがむしゃらなスタイルは経験を積んだことで洗練され、よりチームのために力を発揮できるようになった。新天地で自らが輝けるプレーを、試行錯誤しながら見つけ出しつつある。負傷から復帰して横浜FMでのスタートを切った大津祐樹は止まらない。
(取材・文:舩木渉)
【了】