華麗なプレーで見せ場も。意識したのは「フリーラン」
清水戦は72分までのプレーだった。指揮官も「いきなりこのテンポでやるのが難しいのはわかっていた」と試合後の記者会見で述べた通り、長期離脱からの復帰戦で即フル出場は困難だろう。だが、大津のプレーは負傷明けとは思えないものだった。
72分間のプレーで走行距離は約9.5kmを記録した。これを90分間に換算すると約11.9kmとなる。他の選手と比較しても、中盤でフル出場した天野純や扇原貴宏、右サイドバックの松原健に匹敵する数字である。同じくフル出場したFWウーゴ・ヴィエイラの走行距離は、大津が72分間で叩き出した数値よりも短かかった。
見せ場も作った。交代直前の71分、天野純が蹴った左からのコーナーキックを、扇原が頭で落とす。大津はそのボールを胸でコントロールし、見事なバイシクルシュートを放った。惜しくもゴール左に外れたが、並外れた身体能力とセンスの高さが凝縮されたプレーだった。
「(扇原からの)ボールはダイレクトでヘディングを打てないなと思ったので、胸で上にあげてバイシクルを狙いました。入れば良かったですけどね(笑)。あとちょっとだったので、タイミングと感触は良かったんですけど。あそこは迷わずいけたから、自分の中では良かったと思っています。ゴール取れていれば…という感じですね」
ヘディングの折り返しが来た瞬間的にバイシクルシュートのイメージを描けるのはさすが大津といったところか。そしてマリノスの背番号9が最も意識していたプレーが「フリーラン」だった。
「相手を揺さぶる。自分にパスが出なくても、そこにスペースができて、そのスペースを他の選手が使える。トップ下の選手はそういうことをイメージしながらフリーランを増やしていったらもっとこのチームは回るんじゃないかなと思っていたので、それを意識して今日はプレーしていました」
大津なりに捉えた問題意識をピッチで表現した。実際に清水戦では、常に1トップのウーゴ・ヴィエイラの背後をキープしつつ、機を見てサイドへ抜けるランニングでウィンガーやセントラルMF、サイドバックののポジションチェンジを促した。
ドリブラーのイメージが強かった大津のスタイルが徐々に変わっていることは柏時代から感じていたが、自らリスク覚悟のドリブルを仕掛ける姿はほとんど見られず。軽快な動きと少ないボールタッチで味方と絡みながらゴール前に入っていくプレーは、まさにポステコグルー監督の率いるマリノスにマッチした動きだったのではないだろうか。