ムバッペのトップ起用で新たな攻撃パターンを見出す
そしてもう一つの収穫は、トマ・レマルとキリアン・ムバッペのホットラインが重要な攻撃オプションになることが確認できたこと。
この2人に右サイドバックのジブリル・シディベを加えた3人は、昨季のASモナコの優勝メンバーであり、ハイテンポのパス交換から押し上げる動きは彼らの体にしみついている。
敗戦に終わったコロンビア戦でも、フランスが押していた前半の30分間は何度も彼らが相手のディフェンスラインをこじ開けていた。
レマルは小柄で一見存在感がないが、実は守備貢献も絶大で、クロスだけでなくシュートの精度も高い万能型選手。彼はこの夏のワールドカップで、デシャン監督が絶対に失いたくない選手の一人であるはずだ。
ここにやはりモナコOBのメンディが左サイドに加われば、左右両サイドから勢いあるコンビネーションプレーが仕掛けられる。昨季モナコ戦で対戦したマルセイユのDF酒井宏樹も、「彼、22歳ですか? あの年であんなことができるなんて信じられないですね。恐ろしいサイドバックです」と感嘆していた。
2戦目のロシア戦では、デシャン監督はシステムを変え、オリヴィエ・ジルーをベンチに座らせて、前戦ではサイドで使ったムバッペをトップで先発させた。より広くスペースを使って持ち前の加速とスピードでゴール前をかき回したムバッペはこの試合2得点。
以前読んだインタビューによれば、ムバッペは育成時代から毎年違うポジションでプレーするよう訓練されてきたという。モナコ時代もレオナルド・ジャルディム監督は、右、左、トップとポジションを変えて彼を起用していた。
前線ならどこでも自在にこなすマルチなアタッカーに成長しているムバッペが2点をマークして自信をつけたこともフランスの収穫。
そして、ウスマヌ・デンベレ、アントニー・マルシャル、フロリアン・トーバンなど、サイドアタッカーの多いフランス代表にあって、これまでジルーのポストは現代表では彼以外は務まらない、と言われていたが、ムバッペをトップに据えた布陣も有効なオプションにできることが確認できた。