勝利と育成。宮本監督が追い求める理想
YS横浜戦では高と高江が4試合連続でダブルボランチを組み、サイドバックでは左に山口竜弥(東海大相模卒)、右には松田陸(前橋育英卒)の高卒ルーキーを抜擢。最終ラインの野田裕喜、1トップの一美和成(ともに大津卒)と3年目の選手たちも、トップチームを目指して必死にプレーしていた。
2列目の右を担った下部組織出身の食野亮太郎、途中出場した福田、FW高木彰人、白井陽斗と、オーバーエイジ以外はすべて東京五輪世代だった。育てながら勝つ、というU-23チーム本来の仕事に集中できる日々に、指導者としての醍醐味を感じずにはいられない。
「やっぱり選手が成長している瞬間とか、チームが成長している瞬間や勝った瞬間には楽しさを感じられますよね。高や高江は昨年からずっといい時間を過ごしていますし、高のような選手には(キャプテンとしての)責任感をもってプレーしてほしいと思っています。もちろん成長が見られないときや、結果が出ないときには、チームを束ねることを含めて難しさというものも感じていますけど」
もともと堪能だった英語は、FIFAマスターで学んだ1年間でさらに研ぎ澄まされた。現役時代の輝かしいキャリアに加えて、同世代の指導者たちにはない稀有な能力をもち、組織全体をも統括できるGM的なノウハウをも得たエリートは、これからの人生をどのように描いているのか。
「この先、今年や来年に何をしているかによって、それは決まってくると思っています」
若手を積極的に起用するクルピ監督とビジョンを共有し、ガンバの将来を担うホープを一人でも多くトップチームに輩出する、まずは指導者としての第一歩を極めていくために。無限の可能性を秘めている青年指揮官は知識と経験をフル稼働させながら、勝利と育成の二兎を貪欲に追い求めていく。
(取材・文:藤江直人)
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