キャプテンと監督、2つのリーダーの違い
宮本はガンバ大阪ユースからトップチームへ昇格した第1号として、1995年6月24日の柏レイソル戦でデビューを果たした。U-20代表およびシドニー五輪に出場したU-23代表でも最終ラインを担い、A代表としても71試合に出場。2002年の日韓共催、2006年のドイツと2度のワールドカップを戦った。
洞察力を駆使したクレバーかつ冷静沈着なプレースタイルだけではない。ジーコジャパンの戦いで何度も見せた、卓越したキャプテンシーはいまもファンやサポーターの記憶に刻まれている。
2007年からはオーストラリアのレッドブル・ザルツブルクへ活躍の場を移し、2009シーズンからはヴィッセル神戸へ移籍。ガンバ、ヴィッセル、そして日本代表で務めたキャプテンと監督の仕事は、当然のことながら「まったく違いますね」と屈託なく笑う。
「キャプテンは監督を見ながらチームのなかでのリーダーという形になりますけど、監督とはほぼ全部を決断しなければいけない存在であるし、キャプテンと上手くコミュニケーションを取らなければいけないし、もちろんキャプテン以外の選手たちともコミュニケーションを取らなければいけないので。
監督の仕事というのは本当に多岐に渡ると思っていますし、チーム内の隅々のところまで観察しなければいけないし、スタッフともコミュニケーションを取ってチームをいい方向にもっていかなければいけない。いろいろな能力が求められると、あらためて思っています」
監督としての立ち居振る舞いをキャプテンに見せる作業は、指導者になったいま、立場を変えて継続されている。昨季から引き続き、今季も全4試合でゲームキャプテンを務めている高卒2年目の高は「直接的には何も言われていないんですよ」とこう続ける。
「それでも、試合前に自分のロッカーの前にキャプテンマークが置かれているんです。自分は中盤の選手ですし、チームを引き締めるという意味で、声をかけ続けるところも期待している、と昨季から監督には言われてきたので」
宮本監督に対して抱いてきた冷静沈着でスマートなイメージが、ガンバへの加入とともに、いい意味で覆されたと高は笑う。
「思っていたよりもすごく熱いというか、勝利に対して本当に貪欲で、スカウティングや試合前のビデオ分析、相手選手の特徴などでも非常に細かく言ってくれますし、(通常の)練習だけでなく、自主練習でも個々の課題についてしっかりと言ってくれるので」