トップとU-23の融合で若手の成長促す
それでも指揮官は愚痴をこぼすことなく、与えられた環境のなかでベストを尽くした。最後の6戦を無敗(2勝4分け)で終えた軌跡が、少しずつながら上向きを刻んできた成長曲線を物語っている。
選手が成長した証で言えば、18試合にフル出場していたMF中原彰吾(現V・ファーレン長崎)は9月からトップチームに帯同。プロになって5年目にして、初めてJ1の舞台でプレーしている。高卒ルーキーの2人、高江麗央(東福岡卒)と高宇洋(市立船橋卒)も辛抱して起用し続けた。前者は30試合、後者は28試合でピッチに立ち、さらに高は中盤戦以降でゲームキャプテンを託された。
迎えたオフ。かつてセレッソ大阪を率いたレヴィー・クルピ新監督のもとで、U-23チームはトップチームと再融合することが決定。宮本監督もトップチームのコーチを兼任することになった。
長くガンバを支えてきたMF遠藤保仁らと同じピッチで練習しながら、週末のリーグ戦を前にJ1組とJ3組に分かれる。2つのチームで公式戦に出場する選手が、今季は飛躍的に増えた。
たとえば日本代表のベルギー遠征でJ1が中断する3月下旬をにらんで、クルピ監督と宮本監督はシーズンの開幕直後から話し合いの場をもってきた。その結果として、ゲーム勘を維持させる目的を込めて、24歳以上の選手たちをJ3でプレーさせることを決めている。
たとえば秋田戦では米倉恒貴、西野貴治、菅沼駿哉がオーバーエイジとして最終ラインで先発。横浜戦では西野に加えて、矢島慎也と井出遥也の両MFが同じくオーバーエイジで出場している。
名古屋グランパスとのJ1開幕戦で先発に大抜擢された高卒ルーキー、ボランチの福田湧矢(東福岡卒)はJ3でも全4試合に出場。秋田戦ではプロ初ゴールとなる先制弾を決めている。
昨季からコツコツと積み重ねられてきた努力と、今季から整えられた理想的な環境との相乗効果を、宮本監督は横浜戦後に表情を綻ばせながらこう語っている。
「昨季を戦った選手たちがたくましくなって、今年のパフォーマンスにつながっているところもありますし、オーバーエイジの選手たちによってプレーの質があがるところもある。プラス、トップチームの選手たちとキャンプから一緒に練習していることで、(若い選手たちが)学んでいる、成長しているという部分もある。そうした3つの部分が大きいかなと思っています」