宮本監督から漂う充実感。2年目のJ3は好発進
ほとんど微動だにしない。スーツではなくジャージ姿で、90分間のほとんどでベンチ前の一角に立ちながら、ガンバ大阪U-23を率いる宮本恒靖監督が見せたアクションは2つだけだった。
腕組みをしているか、ズボンのポケットに両手を突っ込んでいるか。声を発する仕草は、まったくといっていいほど見られない。実は昨季とは大きく違うと、苦笑いしながら明かしてくれた。
「昨年がちょっと叫びすぎたので。今年は選手たち(の判断)に任せたほうがいいかな、と。もちろんポイント、ポイントで指示はしていますけど」
指導者の道を歩み始めて4年目。そして、ガンバU-23の指揮官として、J3の舞台で采配をふるって2年目。長丁場のシーズンのうち4試合を終えただけだが、端正なマスクには充実感が漂っている。
1年前は悪戦苦闘の連続だった。開幕からガイナーレ鳥取、SC相模原、鹿児島ユナイテッドFC、FC琉球、AC長野パルセイロと5連敗。しかも、すべて無得点とどん底のスタートを切った。8月末のブラウブリッツ秋田戦からは泥沼の8連敗を喫した。最終的には7勝5分け20敗。17チーム中16位に終わり、31得点は鳥取と並ぶリーグ最少、65失点は同最多を数えていた。
今季はどうか。グルージャ盛岡をホームのパナソニックスタジアム吹田に迎えた、3月11日の開幕戦では前半早々に負った2点のビハインドを、後半にひっくり返す痛快な逆転勝利を収めた。
鹿児島との第2節こそ1‐4の大敗を喫したが、第3節では昨季覇者の秋田を2‐1で撃破した。昨季の2勝目が6月18日の第13節だったから、戦いぶりは大きく変わっている。
連勝を狙って敵地・ニッパツ三ツ沢球技場に乗り込んだ、3月25日のY.S.C.C.横浜戦はスコアレスドローに終わった。それでも試合後の取材エリアで、指揮官はポジティブな材料を探していた。
「無得点で終わったのは(今季)初めてですけど、無失点に抑えたのも初めてなんですよ」
順位うんぬんを語るのはまだまだ早いが、それでも勝ち点10で首位に並ぶ琉球と鳥取に3ポイント差の5位は、昨季と比較すれば大健闘していると言っていい。何が違っているのか。
「今年は単純にプロの選手だけでやれている、というところがありますね。昨年は人数が少なかったので、2種登録の選手を入れざるを得ないという状況で、シーズンを過ごしたんですけど」
YS横浜戦後の公式会見で、昨季との根本的な違いをこう指摘した。長谷川健太前監督(現FC東京監督)の方針もあって、昨年はトップチームとU-23チームが完全に切り離されていた。練習時間も別々ならば、芝生の保護を理由に万博記念公園内の練習場も使用できず、堺などを転々とした。少人数での活動を強いられるが故に、週末のJ3へ選手をそろえるのにも四苦八苦した。