3月のテストマッチでは新オプションにトライ
そのFAは、政府からの命令がない限り代りボイコットに踏み切ることはないだろう。
国内で議論が交わされている中でも出場への準備は進み、代表のガレス・サウスゲート監督も「不安に怖気づいてしまうのか、それとも現実と受け止めて普段通りに振舞えるのか」とした上で、ロシア大会出場権を勝ち取った国として後者のスタンスを貫く意志を示している。
3月の国際マッチ週間でのテストマッチ2試合でも、エースのハリー・ケインは故障中、正GKは選考中の状態で、23日のオランダ戦(1-0)と27日のイタリア戦(1-1)で結果を出しながら、新たな3バックを基本に攻守両面のオプションが試された。
ロシアでの本番は、イングランドの勝利以前に、代表チームとファンの安全を願う異様な大会ではある。FAは会場での飲料水の調達経路を改めて確認し、選手たちはチームホテルや公共施設でのWi-Fi利用を避けるように告げられてもいる。
それでも、チュニジアを相手に初戦を迎える6月18日のヴォルゴグラードのピッチには、サウスゲート率いる“スリー・ライオンズ”がいるはずだ。スタンドには、通常の国際大会に比べれば数分の一に減るとは予想されるが、少なくとも1万数千人の「12人目」がいるに違いない。
最後に、困難に見舞われてもユーモアを忘れない英国人らしいジョークを1つ。ワールドカップ開幕まで3ヶ月を切った国内で、人々は言っている。「イングランドは、長居は無用の早期敗退でロシアに抗議する」のだと。
(文:山中忍【イングランド】)
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