ロシア側からはボイコット検討を茶化す声も
ボイコット検討理由の1つでもあるファンの安全は、より重要な問題でもある。
両国のサポーター間では、フランスで開催されたEURO2016での対戦当時に乱闘が起こったばかり。敵地に乗り込む格好になる今夏のワールドカップに関しては、英国警察が半年も前から「激しい暴力行為の標的にされる危険」を理由に、現地観戦の自粛を国民にアドバイスしている。
今回の毒ガス事件後は外務省からも、英国政府による制裁への報復としてイングランド・ファンに危害が及ぶ可能性が更に高まったとの警告が発せられた。
複数メディアによる代表ファンの意見調査では、下は3割強から上は5割弱の回答者がボイコット案に賛成という結果も出ている。
とはいうものの、事件の3ヶ月後にワールドカップが控えている状況をこれ幸いとばかりに、「先陣を切ってボイコットすべき」とする議会での動きは少しばかり短絡的に思える。
FIFA(国際サッカー連盟)に開催の1年延期を要請し、代わりに来年のイングランド開催とすれば良いという意見に至っては、サッカー界における伝統的な権威を笠に着た「イングランド至上主義」が透けて見えるようでさえある。
現在のイングランド代表が単独でロシア大会参戦を取り止めたとして、一体どれだけのダメージが開催国にあるというのか?
A代表が半世紀以上も国際大会での栄光から遠ざかっているイングランドは、母国民の大半が今夏の優勝には期待などしていない復興途上のチーム。それが現在のステータスだ。
実際、ロシア側の外務省からは、「やはり18年ワールドカップ開催国の座を奪われたことを根に持っているようだ」と、ボイコット検討を茶化す声が伝えられている。