イングランド代表がロシア・ワールドカップをボイコット?
前世紀後半の冷戦以降では、最悪の状態にあるとされる英国とロシアの関係。ロンドン市民として不安を覚えるかと訊かれれば、答えは「イエス」だ。
両国の政府間で「制裁」、「報復」といった言葉が頻発するようになったきっかけは、3月上旬に英国南西部にあるソールズベリーの街中で起こった暗殺未遂事件。
テレーザ・メイ首相もロシア政府が関与した可能性を指摘している、神経ガスを用いた襲撃のターゲットは元二重スパイのロシア人父娘だったが、旧ソ連製とされる化学兵器レベルの猛毒ガスが犯行に使われた舞台は、英国の街中に他ならない。
「第二次世界大戦以来のケース」という報道を聞けば、なおさら物騒に感じる。国内で化学兵器を使用されたと理解している英国側の措置に対するロシア側の反応は、タブロイド紙の見出しを拝借すれば「核保有国に対する挑発などやめることだな」という、脅迫まがいの姿勢だ。
では、その相手に対する抗議の一環として、イングランドが今夏のロシア・ワールドカップをボイコットすべきかというと、筆者の答えは「ノー」になる。
国会でボイコットを促す意見が出ること自体は仕方がないのかもしれない。
サッカーの母国にとってのワールドカップは、全国民レベルの大きな関心事。一方、ロシアにとっての今大会は、“ワールドクラス”の富豪と化しているオリガルヒ(ロシアの新興財閥)の財力を後ろ盾に、ウラジミール・プーチン政権下にある自国の“パワー”を誇示することのできる世界的なサッカーの祭典だ。
そのような舞台に、イングランドが顔を揃えて協力するなど以ての外ということになる。