「監督はピッチでは助けてくれない」(酒井高)
そんなモヤモヤ感は確かに見て取れた。これを改善しようと思うなら、真っ先に彼自身が本気度を前面に押し出すべきだろう。今の大迫は1トップに君臨する攻撃の軸。重責を担っていることを強く自覚し、行動することを求めたい。
そんな意識は山口にも高めてほしいところ。本人は常日頃からも「ピッチの中では喋ってるし、いつもピッチ外で話をする必要はない」という割り切った考えを口にしているが、大島僚太(川崎F)のアクシデントで急きょ出場したマリ戦に関しては、意思疎通がうまくいかなかったと認めている。
「バタバタした展開だったし、もう少し自分たちがボールを持ってゆっくりしてブレイクする時間も作れれば中での会話はもっと増えていく。それを全部、前に前にと急いでやっちゃうから話し合う時間もなかった。そういう問題があったのは確かだと思う」と彼はピッチ内でのコミュニケーション不足を実感したようだ。
その結果、大迫も言うように1人ひとりがプレーに疑問を抱き、迷いながら戦ったことでチームがまとまりを欠く事態に陥った。「今は1つになれていない感じを受けるんで、まず根本的にそういうところからやっていかないと。みんなが1つになってやれれば、距離感も近くなるし、パスコースも増えてミスもなくなる」と山口は前向きに提言していた。その考えを近いポジションや同世代のメンバーに意識的に伝えていくところから、変革の一歩が始まるはずだ。
思いを内に秘める傾向の強い2人とは違って、ハンブルガーSVでキャプテンを務める酒井高徳はストレートに自分の意見を言うタイプ。今回は追加招集の立場で、マリ戦も前半にPKを献上した宇賀神友弥(浦和)に代わって後半から出番が回ってくるという苦境に立たされているものの、足掛け8年間も代表キャリアを積み重ねている選手。縁の下からチームを支える時間も長かっただけに、今の自分たちが何をすべきかをよく理解している。
「今、ハッキリしとかなきゃいけないのは『監督はピッチでは助けてくれない』ということ。監督がどういう戦術をくれたかどうかに関係なく、局面は自分で打開しなきゃいけない。マリ戦で1人ひとりができたかと言われれば、自分はできなかったと思っている。そういうことを自覚して、次は違ったメンタリティで試合に挑むことがまず大事」と彼は語る。ハリルホジッチ監督のタテに速いサッカーを尊重しつつも、それに縛られることなく自己判断力を持ってプレーすることが重要だと酒井高徳は考えているのだ。