大島の台頭で香川にも光が…!?
マリ戦は“仮想セネガル”ということで本大会に向けて不安要素に近い課題が出た試合となったが、大島の負傷前と負傷後は多少分けて評価するべき部分もある。ただ、サッカーの試合に“タラレバ”は禁物であり、実際に大島は怪我で途中交代を強いられたわけだ。
明らかな格上の相手に守備をハメて、カウンターに賭けるような戦い方であれば別の有効なチョイスも考えられるが、自分たちから攻撃のリズムを作ることが求められる試合には大島のように守備のタスクをこなしながら、組み立てで良い効果を生み出せるMFは重要性を増す。
確かにワールドカップ本大会で戦うセネガルは攻撃陣のスケール、守備の堅実さなどでマリを上回るが、中盤のインテンシティは似通っている部分が大きいだけに、攻防の流れとしてはマリ戦に近い展開も想定できる。
今回は長谷部と大島のボランチで、トップ下に森岡という布陣であったが、守備のタスクをこなしながら攻撃のクオリティアップを図れる大島を軸に置くことで森岡や柴崎岳、今回は怪我で選外だった香川真司との組み合わせやFWタイプの小林悠をトップ下に置く形も有効性を増す。
大島はワールドカップ本大会に向けて日本代表に戦術的なバリーエーションをもたらしうる存在だけに、E-1に続いての負傷交代は悔やまれると同時に、メンバー選考に影を落とす可能性もある。単に当落戦上の選手であれば似たタイプの他の候補が優先されるだけだが、大島は山口蛍や井手口陽介より攻撃のクリエイティビティが高く、森岡や柴崎、香川より守備のバランスワークを期待できる希少性の高いスペックを示しており、多少のリスクを承知で本大会のメンバー入りを果たす可能性も残る。
今回の欧州遠征に残るのか、ウクライナ戦でのプレーの目があるかは診断結果しだいだが、大島が国際舞台で活躍していける選手になるにはフィジカル面の改善など、怪我のリスクを減らしていくことは不可欠だろう。そのことを誰より本人が痛感する機会となったはずだ。
(取材・文:河治良幸【リエージュ】)
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