今こそ思い出すべき南アW杯の経験
だからこそ、ここから先はロシアを視野に入れて、チームのベースを固定しながら集団としての完成度を高める方向に舵を切るべきではないか。
ハリルホジッチ監督は「5~6人スタメンで出したい選手がいない。それを痛感する試合だった」と、吉田麻也(サウサンプトン)や酒井宏樹(マルセイユ)、香川真司(ドルトムント)の不在をまたも嘆いたが、川島永嗣(メス)、槙野、長友、長谷部、大迫といった軸を担うメンバーは他にもいる。
アジア最終予選で重要な役割を担った山口、原口元気(デュッセルドルフ)、久保もいる。連係面で計算できる陣容で今一度、自分たちがどういう方向性で戦うべきかを再確認すること。ウクライナ戦ではそこからやり直す必要があるだろう。
2010年南アフリカワールドカップを控えた8年前の日本代表も停滞が続き、岡田武史監督は凄まじい逆風にさらされた。彼らは2月の東アジアカップ(現E-1)で韓国に完敗。3月の親善試合はバーレーンに2-0で辛うじて勝ったものの、4月のセルビア戦は0-3で大敗。壮行試合だった5月の日韓戦も0-2で惨敗し、指揮官が当時の犬飼基昭会長に進退伺いをするところまでいった。
絶体絶命の窮地に追い込まれた選手たちがやったのが、徹底的に話し合いをすることだった。理想を捨てて守備的な戦い方にシフトする方向で全員が一致し、それを指揮官に伝えたことで流れが変わった。
岡田監督もキャプテンを中澤佑二(横浜)から長谷部に代え、GKを楢崎正剛から川島へとスイッチするなど大胆なメンバー入れ替えに着手したが、やはり大きかったのは選手同士の意識改革だった。それがあったから、アンカーを置く4-3-3にシフトして1週間足らずでカメルーンに勝つという奇跡を起こすことに成功した。やはり重要なのは全員が同じ方向を見て、突き進むことなのだ。
それをやるとしたら今しかない。できることなら長谷部、長友らベテランに頼らず、20代の中堅世代が機運が高めるべきだ。本当にロシアで勝ちたいのなら、チームの問題点を洗いざらい出し切り、ウクライナ戦で原点回帰を図ること。この苦境を浮上への好機ととらえることが肝要だ。
(取材・文:元川悦子【リエージュ】)
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