「結局のところ、大事な場面で1本取ればいい」
けれども指揮官はサイドアタッカーに背後への呼び出しとゴールを強く求めている。本田も「自分が(ハリルホジッチ)監督の理想とするタイプではないのは100%承知している」と自身のスタイルと要求に違いがあることを自覚しながらピッチに立つ。
ハリルホジッチ監督の考えるサイドのベストチョイスはスピードを武器とする浅野拓磨(シュツットガルト)のような選手。その浅野がクラブで出番を失って代表メンバー外となったことで、本田の相対的な序列は上がる格好となった。が、足が速いわけでもなく、無尽蔵のスプリントを繰り返せるわけでもない彼は、速さや推進力とは異なる強みを示さなければ代表に生き残れない。
それは一体何なのか…。
彼自身も代表から遠ざかった半年間、ずっと自問自答し続けたに違いない。
「裏に抜ける仕事が自分の強みではないとは言いつつも、僕もこれまで点を取ってきた時には裏に抜けていたこともあった。結局のところ、大事な場面で1本取ればいいってこと。特に僕みたいな選手は質が大事。スプリントが得意な選手だったら20本、30本抜けることに慣れてるけど、僕がそれをやったら他のプレーがボロボロになっちゃう可能性もある。自分の強みを生かしながら、監督の求めるものを出し、その結果として点が取れるという絵を描かないといけない。その作業はここで喋ってる以上に何十倍も難しいです」
本田は自らに投げかけた疑問の回答をしっかりと口にした。ハリルジャパンのサイドプレーヤーにとってハードワークや運動量は確かに重要だが、ここ一番でゴールに突き進む迫力とフィニッシュの精度を出せなければ意味がない。より合理的かつ効率的にゴールを奪えればその方がいいに決まっている。31歳の本田圭佑は今、その方向性を突き詰めていくべきである。