醜態繰り返さぬチーム創りを!
「日々成長しなければならない」と選手の奮起を促したように、モウリーニョ本人も考え直すときがやって来た。
バルセロナ、マンチェスター・シティ、リヴァプールに代表されるように、近代フットボールはボールロスト後の即時奪回からショートカウンターが主流になりつつある。ボールを奪われたら即リトリートでは、時代に取り残されるだけだ。
モウリーニョのキャリアを踏まえれば、ポゼッションを導入するとは思えないが、前線と中盤が連動し、相手陣で素早くボールを奪い返す作業は、現有勢力でも可能なはずだ。
頑健な体格を誇るルカク、スピード豊かなサンチェス、ラシュフォードがプレスをかければ、相手DFのミスを誘ったり、パスコールを限定したりできる。マタの技巧も、高い位置でこそ有効だ。
たしかに28節のチェルシー戦、30節のリヴァプール戦では深めのDFラインが奏功し、チャンピオンズリーグ出場権獲得に向けて貴重な6ポイントを稼いでいる。モウリーニョも「われわれは試合をコントロールしていた」とみずからのプランに一切の疑問を持たなかった。
しかし、2試合ともに14本のシュートを許し、リーグ全体の被シュート数も356本。トップ6のなかでは最多という恥ずかしいデータを、なぜ「コントロール」と表現できるのだろうか。
シティは188本でリーグ最少、リヴァプールも231本と被シュート数が非常に少ない要因を、モウリーニョと彼のスタッフは是が非でも分析しなくてはならない。
ユナイテッドを本来の立ち位置に戻す最善策は、攻撃的なプランを選択肢に加えることだ。個人能力に依存する戦い方と、消極的なリスク管理だけでは限界がある。現有勢力の強みを再チェックし、セビージャ戦のような醜態を二度とさらさないようなチーム創りに取りくむべきだろう。
仮にモウリーニョが現状を看過するのなら、それは〈進化の否定〉である。ユナイテッドの監督を、即座に辞さなくてはならない。
(文:粕谷秀樹)
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