「もし同じチームになれたらすごく楽しいと思う」(岡崎)
J1でのデビュー戦でフル出場を果たし、FC東京のリーグ戦初勝利に少なからず貢献した試合後の取材エリア。緊張感から解放された岡崎は、身長182cm体重75kgとほぼ同じサイズの杉岡と、再三にわたって繰り広げたマッチアップを振り返りながら笑顔を浮かべた。
「スギ(杉岡)はU-21代表に入っているし、本当にすごいと思う。自分はその間にけがで手術を受けるなど、いろいろありましたけど、こうやって同じピッチに立てたことはすごく嬉しい。これからも試合を通して切磋琢磨していきたいし、もし同じチームになれたらすごく楽しいと思います」
FC東京U-15深川時代の記憶のなかから蘇らせた岡崎の癖を逆手にとって幾度となくボールを奪えたと、杉岡もまたMFミキッチとの交代でベンチに下がるまでの66分間にわたった、親友との攻防を笑顔で振り返った。
「癖は変わっていなかったですね。右足で持つフリをして中に運んでくるプレーは、昔からやっていたので。プレーの感じが変わっていなかったからこそ、けっこうボールを奪えたと思う」
ともに1998年生まれの2人は、元サンフレッチェ広島監督の森保一氏に率いられる、東京五輪に臨む男子代表チームに招集される資格をもつ。今年はU-21代表として活動するチームに初めて招集された杉岡は、FC東京戦の終了とともに南米パラグアイ遠征へと気持ちを切り替えている。
「森保監督のチームでプレーすること自体、僕は初めてなのですごく楽しみですね。ベルマーレでしっかりプレーしていれば、いずれは選ばれるだろうと思っていました。ただ、いまは代表に入っていますけど、本番では誰が入るかわからないので、自分のやるべきことをしっかりやっていきたい」
東京五輪の出場資格となる1997年1月1日以降に生まれたすべての選手にチャンスがあると、森保監督は公言している。だからこそ杉岡は「いまは代表に入っている」と強調し、岡崎も「もし同じチームになれたら」という言葉を口にした。
一生に一度あるかどうか、という自国開催のオリンピックが2年後に迫っている今季。夢舞台に立つ姿を思い浮かべるだけで、否が応でもモチベーションが駆りたてられるからか。いわゆる東京五輪世代、そのなかでも10代の選手たちが躍動する姿が例年以上に目立つ。
そして、挑戦権を得るための戦いへ、昨年5月のFIFA U-20ワールドカップにも出場した杉岡に続いて、岡崎も遅ればせながら参戦した。別々の道を歩み始めてから5年目。再び同じチームで交差する光景を夢見る2人は切磋琢磨しながら、知られざるライバル物語の続編を紡いでいく。
(取材・文:藤江直人)
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